でんた丸ブログ

みなし配当課税

配当について租税法は会社法の概念を借用しながらも、法人税法24条、所得税法25条において「みなし配当」という概念を創設しています。この結果、(Ⅰ) 法人段階で所得に対して法人税の課税がなされた後で更に、(Ⅱ) みなし配当事由(※)により金銭その他の資産の交付を受けた側で、当該資産の交付額のうち原資の回収にあたらない部分に対し「みなし配当課税」がなされることになります。法人株主については、原則として受取配当等は益金不算入となるため(2025年5月19日付け本ブログ参照)、ここでは個人株主を想定して話をすすめていきます。

法人に対し出資された財産を原資にして当該法人が稼いだ所得に対する課税として、当該法人段階の法人税の課税だけでなく、「みなし配当」という概念が創設されていることで、当該法人の株主段階の課税も加わり、二段階課税が貫徹されることになります。仮に「みなし配当」という概念がなかったとすると、法人段階の法人税の課税だけになり、二段階課税が貫徹されないことになります。現行法では、二段階課税を貫徹した上で、当該法人の個人株主段階において配当控除(所得税法92条)が手当てされており、法人段階の法人税の課税と、当該法人の個人株主段階の課税が不完全ながらも統合されています。

(※)主な、みなし配当事由は、以下のとおりです。

①適格合併を除く合併(法人税法24条1項1号、所得税法25条1項1号)

②適格分割型分配を除く分割型分配(法人税法24条1項2号、所得税法25条1項2号)

③適格株式分配を除く株式分配(法人税法24条1項3号、所得税法25条1項3号)

④剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)

⑤解散による残余財産の分配(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)

⑥自己株式の取得(法人税法24条1項5号、所得税法25条1項5号)

(参考)

現物配当が適格現物分配に該当する場合には、所得税法24条1項かっこ書により、配当所得の対象となる配当等の範囲から除かれているため、適格現物分配に該当する現物配当を行う法人は、源泉徴収義務(同法181条)を負いません。


このページのトップへ