でんた丸ブログ

【所得税法】配当所得について総合課税を選択するのは有利か

3月決算の会社においては、配当基準日が3月31日になっていることが多いです。この日に株主になっていないと配当を受け取ることはできません。今年は、3月30日と31日が土日になるため、配当を受け取るためには3月27日までに株式を購入する必要があり、3月28日が権利落ち日となります。

配当所得に対しては税金が源泉徴収されています。一般株式等の源泉徴収税率は、所得税20%、復興特別所得税0.42%です。上場株式等の源泉徴収税率は、所得税15%、復興特別所得税0.315%、住民税5%です。

復興特別所得税は所得税額の2.1%相当額となるので、簡単化のため、ここでは考慮外とした上で、配当所得において総合課税を選択するのが有利かどうか(一般株式等については、総合課税を選択できる場合であることが前提です。)について考えてみます。結論としては、所得税率は累進税率であるため、配当所得を含めた課税総所得金額(総所得金額ー所得控除額)が3,299,000円以下で所得税率が10%の範囲内となる場合には、申告不要とすることができるときでも、配当所得において総合課税を選択し確定申告をする方が有利となります。理由は次のとおりとなります。

1.一般株式等

所得税率10%ー配当控除率10%ー源泉徴収税率20%=△20%

となり、源泉徴収税額の全額について還付を受けることができます。

2.上場株式等

所得税率10%ー配当控除率10%ー源泉徴収税率15%=△15%

となり、一般株式等と同様に、源泉徴収税額の全額について還付を受けることができます。

「暗号資産」「競馬の馬券の払戻金」と所得税の確定申告

暗号資産の一つであるビットコインを、メルカリにおける決済手段として利用できるというニュースが先日ありました。暗号資産は決済手段であると同時に、投機の対象となっているため、株式と同様に日々相場が動いており、直近では高騰しております。今回は、①個人が暗号資産を売買したことにより利益を得た場合、②競馬の馬券が当たった場合に、所得税法上どのように取り扱われるかについて考えてみます。

1.暗号資産

暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得になります。もっとも、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として、暗号資産を使用した場合、暗号資産取引により生じた利益は事業所得に区分されます。では、確定申告はどうなるのでしょうか。

「給与等」(所得税法28条1項)の金額が2000万円以下の給与所得者の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」(同法121条1項1号)が20万円以下であるときには、確定申告は不要となります。

2.競馬の馬券の払戻金

いわゆる一般の競馬愛好家の「競馬の馬券の払戻金」は所得税法上、10種類の各種所得のうち、どの所得に区分されるのでしょうか。この場合は、一時所得に区分されるため、雑所得の金額の計算のときのように、外れ馬券の購入費用を必要経費として控除することはできません。もっとも、一時所得の場合には雑所得とは異なり、各種所得の金額の計算上、50万円を特別控除額として控除できます(所得税法34条3項)。

前述の暗号資産の場合と同様に、「給与等」(所得税法28条1項)の金額が2000万円以下の給与所得者の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」(同法121条1項1号)が20万円以下であるときには、確定申告は不要となります。一時所得は、課税標準の計算の段階で、「×1/2」をするのですが、確定申告の要否の判定にあたっては、「×1/2」をする前の所得金額で判定します。

【消費税・法人税】簡易課税・2割特例適用者に対する特例の新設

簡易課税制度や2割特例を適用する事業者(以下「簡易課税適用者等」という。)については、インボイスの保存が仕入税額控除の要件とされていないことなどに鑑みて、取引の相手方がインボイス発行事業者か否かの確認を不要とすることができる以下の特例が、令和6年度税制改正大綱に盛り込まれました。すなわち、簡易課税適用者等は、令和5年10月1日以後に国内において行う課税仕入れについて、税抜経理方式を適用した場合の仮払消費税等として計上する金額につき、継続適用を条件として、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、108分の8)を乗じた金額とすることが明確にできるようになりました。

この税制改正大綱を受けて、消費税に係る経理処理方法についての所要の見直しとして、国税庁は、令和5年12月27日付で、「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」という法令解釈通達を一部改正しました。これにより、法人税に係る法令の規定及び通達の定めの適用についても、上記特例と同様とすることが明確にできるようになりました。

つまり、簡易課税適用者等が上記特例を選択適用すれば、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れであったとしても、仮払消費税等の額として経理した金額を、取引の対価の額に算入して法人税の課税所得金額の計算を行うという必要が明確になくなりました。

「控除対象外消費税額等」の条文上の定義

インボイス制度が今年の10月1日からスタートしました。今回は、その経過措置の法人税法上の処理について考えてみたいと思いますが、その前にインボイス制度の内容について確認します。

インボイス(適格請求書又は適格簡易請求書)発行事業者以外の者(免税事業者、一般消費者又は登録を受けていない課税事業者)からの仕入れについては、仮にそれが課税仕入れであっても、原則として仕入税額控除の対象にはできません(消費税法30条1項、7項、8項、9項)。

但し、例外として、不動産業者・廃品回収業者・古物商・質屋が行う棚卸資産の仕入取引については、その相手方がインボイス発行事業者以外の者であっても、仕入税額控除の対象とすることができます(消費税法30条7項、消費税法施行令49条1項1号ハ)。

ここまでが、インボイス制度の内容ですが、経過措置として以下の負担軽減策が設けられました。つまり、2023年10月1日のインボイス制度スタートから3年間は、負担軽減策として仕入税額の80%相当額を、更にその後3年間は、仕入税額の50%相当額を仕入税額控除の対象とすることができます(平成28年改正法附則52条1項、53条1項)。

では、残余の仕入税額の20%相当額や50%相当額は法人税法上、どのように処理すべきなのでしょうか。これらは、本来的に仕入税額控除の対象にできないため、仕入れの対象が資産であっても、控除対象外消費税額等になることはありません。このことは、法人税法施行令139条の4第5項の「控除対象外消費税額等」の定義(法人税の課税上の用語であり、仕入税額控除の適用を受ける場合における課税仕入れ等に係る消費税額等のうち、仕入税額控除をすることができない金額のこと)から分かります。従って、残余の仕入税額の20%相当額や50%相当額は法人税法上、取引の対価の額に算入して法人税の所得金額の計算を行うことになります。

※附則:法律の中の本則以外の部分で、施行期日や、法律の制定・改廃による急変を緩和するための経過措置などを示す役割があります。インボイス制度は平成28年税制改正法により措置されたものですが、附則において上記の負担軽減策としての経過措置が定められました。

※法人税法65条で、「各事業年度の所得の金額の計算の細目」は政令で定めるとされており、その委任を受けた法人税法施行令139条の4で、「資産に係る控除対象外消費税額等の損金算入」について定められています。


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