でんた丸ブログ
防衛特別法人税
令和7年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」により「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」が改正され、防衛特別法人税が創設されました(令和7年度税制改正)。
令和8年4月1日以後に開始する各事業年度に課され、以下の算式で防衛特別法人税の税額が計算されます。納付額が0となっても、ゼロ申告が必要となります。
防衛特別法人税=(基準法人税額(※)-基準控除額500万円)× 4%
※ 基準法人税額:所得税額控除等適用前の法人税額
防衛特別法人税の創設により、令和7年3月期決算の税効果会計の適用における令和8年4月1日以後開始事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算の際に用いる法定実効税率が、以下のように変わります。
・法定実効税率の計算式の分子
=法人税率×(1+地方法人税率+防衛特別法人税率+住民税率)+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率
・法定実効税率の計算式の分母
=1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率
法人税率における基本税率と軽減税率
前回、法人税率における基本税率を取り上げました。しかし、法人によっては基本税率23.2%ではない軽減税率が適用される場合があります。今回は、どのような法人に対して、どのような形で軽減税率が適用されるのかをみていきます。
法人は内国法人と外国法人にまず区分され、前者は所得の源泉地を問わず、全ての所得について納税義務を負うことになります(法人税法(以下省略)4条1項、5条)。一方で、後者は、国内源泉所得(138条)についてのみ納税義務を負います(4条3項、8条)。ここでは内国法人に絞って解説します。
内国法人は以下のように区分されます(2条5~9号)。
① 中小法人以外の普通法人と、中小法人(66条2項、5項参照)
②-1 一般社団法人等(別表第2に掲げる非営利型の一般社団法人および一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人。これらは全て公益法人等に含まれます。定義規定:66条1項第1かっこ書。)
※ 公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人のうち、非営利型法人以外の法人は、普通法人(上記①)として取り扱われます(注1)。
②-2 人格のない社団等(マンション管理組合など)
③-1 一般社団法人等以外の公益法人等(学校法人、宗教法人、商工会議所、日本公認会計士協会など)
③-2 協同組合等(農業協同組合、信用金庫など)
④ 公共法人(地方公共団体など)
【納税義務の範囲】
1.公共法人(上記④)
公共性の高さゆえに、法人税を納める義務はありません(4条2項)。
2.公益法人等(上記②-1と③-1)、人格のない社団等(上記②-2)
収益事業から生じた所得のみが課税対象となります(4条1項但書、6条)。
3.その他の法人(上記①と③-2)
全所得が課税対象です(4条1項本文)。
【税率】
1.上記①、②について
・66条1項により、23.2%の基本税率が適用されます。
・ただし、66条2項により、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(若しくは資本若しくは出資を有しないもの)又は人格のない社団等で、所得年800万円以下の部分は、19%の軽減税率が適用されます。もっとも、66条5項による一定の例外があります。
➡ 下記3.のとおり、所得年800万円以下の部分は、租税特別措置法により19%の軽減税率は更に低くなり15%となります。
2.上記③について
66条3項により、軽減税率19%が適用されます。
➡ 下記3.のとおり、所得年800万円以下の部分は、租税特別措置法により19%の軽減税率は更に低くなり15%となります。
3.租税特別措置法における「法人税法の特例」
租税特別措置法42条の3の2により、上記①のうちの中小法人及び上記②、③については、政策的に、所得年800万円以下の部分において、軽減税率の特例として、15%(ただし、所得の金額が年10億円を超える事業年度については、17%)の法人税率が時限的に適用されています。
(注1)公益法人等(定義規定:2条6号)に含まれない、つまり別表第2に掲げられていない、非営利型ではない一般社団法人および一般財団法人は、普通法人(定義規定:2条9号)に区分される点にご注意ください。
(注2)人格のない社団等(2条8号)は、3条により法人税法上は法人とみなされます。また、人格のない社団等の概念は、いわゆる権利能力のない社団または財団という私法上の概念と同義とされています。
なお、人格のない社団等には民法上の組合(民法667条)や匿名組合(商法535条)は含まれません(法人税基本通達1-1-1)。
法人税率の推移
法人税の税率は、昭和59年度以降、現在に至るまで一貫して低下してきました。基本税率でみると、昭和59年度は43.3%でしたが、現在はその約半分の23.2%です。理由として、経済がグローバル化する中で、法人税率を諸外国より低くすることで、諸外国から投資を呼び込むとともに、国内の企業が法人税率の低い諸外国へ移転するのを防ぐという点が挙げられます。
2024年1月時点の諸外国における法人実効税率(法人所得に対する国税と地方税を合わせた税率)は以下のようになっています(財務省HP参照)。
・ドイツ:29.93%
・日本:29.74%
・米国:27.98%
・カナダ:26.50%
・フランス:25.00%
・英国:25.00%(最高税率)~19%
・イタリア:24.00%
このように、日本はドイツに次いで法人実効税率が高いのですが、他の先進国に比べ断トツに高いわけではないことが分かります。これは日本を含む先進国が法人税の引下げ競争を行ってきた結果といえます。このような競争が続くと、最終的には法人税率がゼロになるまで競争が続けられるのではないかという懸念がなされ、「税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、略してBEPS)」防止の観点から、税率15%のグローバル・ミニマム課税が令和5年度税制改正により導入されました。この令和5年度税制改正は、2021年(令和3年)10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意されたグローバル・ミニマム課税へ対応するためになされました。
法人株主が配当金を受け取る場合の法人税の取扱い
今回は、株主が配当金を受け取るとして、当該株主が法人である場合にどのように法人税がかかってくるのかを考えてみます。
まず、受取配当等は法人税法23条により益金不算入とされます。その趣旨は、法人段階において、二重課税を含む多重課税を排除する点にあります。法人間で配当が繰り返される場合を考えると、最初に法人が配当をする際には当該法人の利益から法人税が引かれた後の税引後の利益から配当がなされます。仮に法人税法23条がないとすると、当該法人から配当を受けた二番目の法人は、その配当を含む利益から更に法人税が引かれてしまいます。これでは一番目の法人が稼いだ利益に対して法人をまたいで二重に課税していることになってしまい、課税のしすぎということになります。このような多重課税を排除する観点から、昭和25年にシャウプ勧告を受けて受取配当金益金不算入制度が導入され、昭和63年の改正までは、法人株主であれば、株式等の保有割合に関係なく、受取配当の全額が益金不算入とされていました。
その後、法人税法の平成14年度改正、平成27年度改正を経て現行23条に至っています。これらの改正の中で、受取配当等が益金不算入となる割合は、株式等保有割合が低くなるにつれ縮小されていきました。つまり、法人税法の税率が徐々に低くなっていく中で、税収を確保するために、法人税の課税ベースが拡大していったのです。
現行23条の内容は次のとおりです。
● 完全子法人株式等(株式等保有割合:100%)及び関連法人株式等(株式等保有割合:3分の1超)
⇒益金不算入割合:100分の100
● その他の株式等(株式等保有割合:5%超3分の1以下)
⇒益金不算入割合:100分の50
● 非支配目的株式等(株式等保有割合:5%以下)
⇒益金不算入割合:100分の20
なお、令和2年度改正では、関連法人株式等と非支配目的株式等における株式等保有割合の判定の際には、当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人が保有する株式の数も含めて判定することとなりました(23条4項第1かっこ書、同条6項第1かっこ書)。
社内飲食費の法人税法上の扱い
前回述べたように、社内飲食費は、交際費等の範囲から除外される「飲食費」に該当せず、交際費等に該当する費用になるところ、条文上の根拠は次のようになります。
租税特別措置法61条の4第6項をみると、
「第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。」[下線部分は筆者]
と書いてあり、上記かっこ書内の「専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するもの」が社内飲食費に該当します。
従って、社内飲食費は交際費等の額のうちの接待飲食費には該当せず、また交際費等の範囲から除外される「飲食費」(租税特別措置法61条の4第6項第2号)にも該当しないことになります。
※ 中小法人は、①800万円までの交際費等の全額損金算入、②接待飲食費の50%の損金算入(注1)の選択適用が認められています。
(注1)接待飲食費の50%の損金算入の適用は、中小法人以外の法人(事業年度終了日における資本金等の額が100億円以下の法人に限る。)にも認められています。