でんた丸ブログ

交際費等の範囲から除外される「飲食費」の基準

昨今の物価上昇により、居酒屋で飲食をすると5,000円超の支払いになることが多くなりました。このような物価の状況を受けて、令和6年度の税制改正では、交際費等の範囲から除外される「飲食費」の基準が5,000円以下から1万円以下に引き上げられました(租税特別措置法61条の4第6項2号、同法施行令37条の5第1項)。1人当たりの「飲食費」が1万円超となると、5,000円超過部分だけではなく全額が交際費等となり、原則として損金不算入となります(同法61条の4第1項)。今回は、この「飲食費」(同法61条の4第6項2号)の範囲について個人的に気になった点を取り上げます(国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」参照)。

1.当該「飲食費」の範囲に含まれるもの

・得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」(この場合の対象となる弁当は、得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提としています。)

・飲食等のためにテーブルチャージ料やサービス料等として飲食店等に対して直接支払うもの

2.当該「飲食費」の範囲から除かれるもの

・社内飲食費(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費)

→他の会議費等の費用として交際費等の範囲から除かれる場合があります。

※ 接待する相手方が親会社の役員等の場合には社内飲食費に該当しません。

・接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用として支出したもの(接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するため自社が負担した送迎費)

・ゴルフ・観劇・旅行等の催事を実施することを主たる目的とする一連の行為の一つとして実施される飲食等の費用

(注)

飲食費が1人当たり1万円以下か否かを判定する際は、その飲食費を支出した法人の適用している税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、前者であれば消費税等の額を含めず、後者であれば消費税等の額を含めて判定することになります。

総則6項の適用

昨年10月に、「財産評価基本通達6項の適用を巡る判決」と題するブログを書きました。この総則6項が適用された事案は、総則6項の適用に係る判断枠組みを示した最高裁令和4年4月19日判決以降、増加しています。総則6項の適用に当たっては、国税庁長官の指示に基づいて国税局の資料調査課が調査を担当します。そこで、今回は国税局の資料調査課についてご紹介いたします。

資料調査課は課税部に属するところ、刑事事件を扱う査察部のような強制調査はできず、任意調査を行います。ただし、裁判を前提に証拠固めをする点では、共通しており、反面調査に入り、取引先や銀行から資料を収集し、「任意調査のエキスパート集団」と呼ばれています。税務署による税務調査に比し、資料を収集できるまで、より頑張るため、税務署よりも資料調査課の方が「悪徳者にとっては畏怖の的」になっているようです。

東京国税局を例にとると、税務署だけでは十分な調査ができない「調査困難事案」や租税回避事案等の「課税困難事案」を積極的に調査する組織は次のようになっています。

<個人を基幹として調査を実施する部署>

課税第一部

資料調査第一課:調査非協力及び不正常習者や事業等の規模が大きい個人事業者等を対象に、国税局の職員のみ又は税務署の職員と合同で調査を実施

資料調査第二課:相続税調査の専門家集団

資料調査第三課:国際事案専門の、個人課税系統・法人課税系統・資産課税系統の職員が配属された混成の部署

<法人を基幹として調査を実施する部署>

課税第二部

資料調査第一課:事業規模が大きく、全国的に広域に展開する法人を対象に、原則として国税局の職員のみで調査を実施

資料調査第二課:税務署だけでは十分な調査を実施することが困難と認められる法人に対して、国税局の職員が主導して税務署の職員と合同で調査を実施

資料調査第三課:海外取引法人や公益法人等に対して、第一課と同様に原則として国税局の職員のみで調査を実施

税務行政

国税庁は、昭和24年に大蔵省(当時)主税局から税務執行面を分離する形で、内国税(国税のうち関税、とん税及び特別とん税を除いたもの。)に関する賦課徴収を担当する外局として発足しました。開庁式の祝辞でハロルド・モス氏(元GHQ内国歳入課長)は、国税庁のスローガンとして「Respect among the honest Fear among the dishonest(正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的)」と述べたそうです。

国税庁職員の令和6年度の定員は、5万6380人となっており、職員は以下の各部署に配置されています。

・国税庁本庁:1,110人(構成比2.0%)

・税務大学校:328人(同0.6%)

・国税不服審判所:464人(同0.8%)

・11の国税局と沖縄国税事務所:16,744人(同29.7%)

・524の税務署:37,734人(同66.9%)

国税庁職員になるためには、主に

・国家公務員採用総合職試験(令和6年4月1日付で14人採用)

・国税専門官採用試験(令和6年4月1日付で945人採用)

・税務職員採用試験(令和6年4月1日付で713人採用)

などの試験に合格する必要があります。

国税庁本庁は霞が関の財務省本省と同じ敷地に所在し、東京国税局(管轄:東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)は、築地にある朝日新聞東京本社の隣に所在しています。

(注)

財務省主税局:租税制度の調査、企画、立案を担当する機関

財務省の関税局と税関:関税、とん税及び特別とん税に関する制度の調査、企画、立案及びその賦課徴収を担当する機関

「資産の販売等」に係る収益と、それ以外の収益の益金算入時期

前回は損害賠償請求権の認識基準として実現主義や権利確定基準が採用されており、法人税法22条4項の公正処理基準が根拠とされていると書きました。この22条4項においては、平成30年度改正の際に、「別段の定めがあるものを除き」という文言が追加され、当該「別段の定め」として同法22条の2が新設されました。22条の2は、企業会計基準基準第29号「収益認識に関する会計基準」制定に際して、「資産の販売等」に係る収益を益金として認識する時期と額について定めたものです。

22条の2はこのように「資産の販売等」に係る収益を適用対象としており、これ以外の例えば損害賠償請求権といった収益は適用対象外です。従って、平成30年度改正で22条の2が新設された後でも、損害賠償請求権の益金算入時期は22条4項に基づき実現主義や権利確定基準により判断されます。

以上をまとめると、次のようになります。

・「資産の販売等」に係る収益の益金算入時期の根拠条文→22条の2第1項~第3項

・それ以外の収益の益金算入時期の根拠条文→22条4項(実現主義や権利確定主義)

過年度売上金の横領が当期に発覚した際の、消費税の取扱い

過年度売上金の横領が当期に発覚した際に、消費税はどのように処理すればよいでしょうか。

この点、過年度売上に係る現預金を横領された際に、横領された会社が既に売上を適正に計上していたか否かで場合分けします。

①  横領された会社が既に過年度に適正に売上を計上していた場合

この場合に既に消費税を適正に納付しているときには、修正申告の必要はありません。

もっとも、現預金の当該横領を隠蔽するために経費を架空計上していたなど、消費税を適正に納付していなかった場合には、修正申告をする必要があります

②  横領された会社において当該横領の発覚が遅れたため、過年度に売上を過少計上していた場合

この場合には、当該横領により会社が認識できなかった売上に対応する消費税分につき、修正申告により納付する必要があります。

なお、上記②の場合には、その遡って修正した課税期間の課税売上割合を再計算する必要もあるので、ご注意ください。

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