でんた丸ブログ

フリンジ・ベネフィット通達(その2)

フリンジ・ベネフィット通達には前回ご紹介した所得税基本通達以外にも、当該基本通達を補完する個別通達が多く存在します。例として「所得税基本通達36-30の運用について(法令解釈通達)」が挙げられます。

非課税とする場合を定めるフリンジ・ベネフィット通達は、法律の建前よりも納税者に有利なルールであるため、当該ルールを争う納税者がおらず、結果として通用しているという側面があります。また、法律の建前よりも納税者に有利な通達に納税者が従っている状態が長年継続し、納税者の間に法的確信をもって定着すると、行政先例法が成立することとなります。そして、課税庁が行政先例法と異なるルールに変更する場合には、もはや通達改正ではなく法律を制定する必要があります。しかしながら、行政先例法が成立しているか否かの判断は、納税者や課税庁には困難であり、最終的には裁判所の判断を待たなければ分からないという難点があります。つまり、課税庁がまだ行政先例法は成立していないと判断し、納税者に不利な内容へと通達改正した場合において、納税者が行政先例法は既に成立していると判断し改正後通達に基づく課税処分を争うときには、納税者は行政先例法の成否につき裁判所の判断を待たねばなりません。そして、納税者が裁判所で争うコストが多大で割に合わないと判断する場合には、結局、裁判には至らずに改正後通達が通用していくという現象が生じることになります。

なお、フリンジ・ベネフィット通達により非課税とされるフリンジ・ベネフィット(追加的給付)は、給与所得に係る源泉徴収義務を定めた所得税法183条1項にいう「給与等」に該当しないため、フリンジ・ベネフィットの支払者は源泉徴収義務を負わないと解されています。現実問題として源泉徴収が困難な場合も多いため、妥当な解釈と思われます。


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