でんた丸ブログ

有価証券報告書の定時株主総会前の開示

今までは3月決算の上場企業であれば、6月下旬に定時株主総会が開催され、当該総会の日に有価証券報告書が提出・公開されるという実務がありました。しかし、これでは株主が有価証券報告書を閲覧し、株主総会における議案に対する賛否について態度を決するに当たり、十分な時間を確保できないという問題点がありました。そこで、有価証券報告書を株主総会の日の3週間以上前に開示しようという運動が、機関投資家からの要望を発端として、活発化しています。そうなると、外部監査人による金融商品取引法監査の時間を十分に確保する要請もあるため(当該監査を受けた財務諸表を有価証券報告書に記載する必要があります。)、有価証券報告書の作成の前倒しではなく、株主総会の日を後倒しにしようということになります。

ここで配当決議は株主総会決議事項とされており(会社法454条1項)、また、基準日から3カ月以内に株主総会を開催する必要がある(同法124条2項)ため、株主総会の日を後倒しにするとなると、配当基準日を議決権基準日と共に変更することとなり、配当の権利確定や配当金の支払いが従来より遅れることになります。

もっとも、会社法459条1項という特則により、同項所定の会社は配当決議を定款の定めにより取締役会決議事項にすることができます。この場合には、配当基準日を議決権基準日に合わせて後倒しする必要はなく、従来どおり期末日を配当基準日にすることが可能となり、配当の権利確定や配当金の支払いを従来どおりのスケジュールで行うことが可能です。現在、上場企業の約半数で、配当決議を取締役会決議事項にしています。

なお、米国では、配当は株主総会決議事項ではなく、株主が、役員の選任議案への賛否を通して配当決議に影響力を及ぼすという仕組みになっています。


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