でんた丸ブログ

留保金課税

これまで、受取配当等の課税の場面で、法人段階と株主段階で各1回の課税がなされるという二段階課税について述べてきましたが、第二段階目の個人株主段階での受取配当等の課税を回避する目的で第一段階の法人が利益を配当せずに留保するということが考えられます。例えば、個人事業主が所得税における超過累進税率(最高税率45%、所得税法89条)を回避するために法人成りし、利益を配当せずに一定税率である法人税率23.2%(法人税法66条1項)の法人段階の課税だけで済ませようとする場合です。そこで、このような租税回避に対するペナルティとして現行法では、3段階の超過累進税率の構造を有する留保金課税のルールが設けられています(法人税法67条1項)。留保金課税は通常の法人税に加え特別に課されるものです(特別税率)。

留保金課税の対象となる会社は、多様な株主がおり株主が配当を要求するような上場会社では勿論なく、1つの株主グループにより支配され、当該1つの株主グループの意思で上記のような租税回避を試みようとする傾向にある「特定同族会社」(※)です。もっとも、平成19年度改正により、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は留保金課税の対象から除かれました。なお、その後の平成22年度改正により、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社であっても、資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人等と完全支配関係にある会社であれば、留保金課税の対象となる会社となりました。

(※)特定同族会社の定義は、法人税法67条1項にあり、その定義で使用されている「被支配会社」の定義は同条2項にあります。


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