でんた丸ブログ

監基報

公認会計士が監査業務に従事しなくなっている理由として、監基報の存在が、監査の魅力を減じているという内容の新聞報道が昨年にありました。今回は、監基報(監査基準報告書)の位置づけについて確認します。

金融庁の企業会計審議会が、①「監査基準」「中間監査基準」「監査における不正リスク対応基準」と②「監査に関する品質管理基準」を定めており、両者は一体として適用されるものとしています。監基報は、このうち①の基準に関して日本公認会計士協会(JICPA)が定めた細則です。②の基準に関してJICPAが定めた細則としては、品基報(品質管理基準報告書)が別途あります。

監査基準は1956年に定められていて、その後、累次の改訂がなされ現在に至っています。一方、監基報は、JICPAが編纂した『監査実務ハンドブック』によれば、2011年に定められたものが改正されて現在に至っている、となっています。この1956年と2011年との間に時の差があるのは、なぜでしょうか。これは、国際監査基準(ISA)を作成している国際監査・保証基準審議会(IAASB)が、ISAの構成に係るクラリティ・プロジェクトを進めた(2004年~2009年)ことに起因します。日本でも、このクラリティ・プロジェクトにならい、監基報の構成について(ⅰ)監査上の「要求事項」とその解釈に当たる「適用指針」を明確に区別すること、(ⅱ)個々の報告書の「目的」を明確にすること、という形で見直すこととなりました(新起草方針の採用)。こうして現在の監基報の元となる規定が2011年に定められた、ということになっているのです。

 

監査法人

監査法人は法人税法上、普通法人に区分されますが、公認会計士法34条の2の2により設立が認められているという点で特殊です。以前紹介した公認会計士法1条(公認会計士の使命)と同法1条の2(公認会計士の職責)は、監査法人に準用されます。経営の神様が発する松下幸之助の言葉よりも、これらの法律の条文に何が書かれているのかの方が優先されるのです。この点、日本公認会計士政治連盟は、国会議員と密に意見交換することにより、公認会計士法をはじめとした公認会計士に関わる法制度の改善を図っています。

製品に品質の高低があるのと同様に、監査の品質にも高低があります。しかし、今までは監査報告書が短文式で定型的な表現で書かれていたため、監査法人ごとの違いが外部からは分かりにくい状況にありました。そこで、2021年3月期からは、一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社に対してはKAM(監査上の主要な検討事項)を監査報告書に記載することが義務付けられました。また、監査法人のガバナンス・コードにより原則として監査法人の透明性を高めることが求められています。

公認会計士と公益

2023年12月10日(日)に公認会計士試験短答式試験が実施されました。

2022年5月に公認会計士法が改正され、2023年4月1日より施行されていますが、第1条の「公認会計士の使命」や第2条の「公認会計士の業務」の規定が改正されたわけではありません。2021年の公認会計士試験短答式試験では、以下の記述の正誤が問われました。「公認会計士の使命は、監査証明業務及び非監査証明業務を通じて、会社等の公正な事業活動、投資者及び債権者の保護等を図り、もって国民経済の健全な発展に寄与することである。」

答えは「〇」です。ここで「非監査証明業務」とは、公認会計士の名称を用いて、他人の求めに応じ報酬を得て、財務書類の調製をし、財務に関する調査若しくは立案をし、又は財務に関する相談に応ずることを業とすることを指します(公認会計士法2条2項)。監査証明業務以外のこれらの業務(監査証明業務とは異なり、公認会計士の独占業務ではありません。)をする場合であっても、最終的には「国民経済の健全な発展に寄与する」ことが公認会計士には求められているのです。換言すれば、公認会計士としては、国民経済の健全な発展に寄与するとは思えないにもかかわらず、会社等の事業活動、投資者及び債権者の保護を図ることがあってはならない、ということです。

 

 


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