でんた丸ブログ

リースの定義と識別

今後、新リース会計基準について各論を述べていきますが、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」を「会計基準」、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」を「適用指針」と略します。

リースの定義:原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分(会計基準第6項)

「契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する」(会計基準第25項)とされ、リースの識別が求められます。この識別にあたっては、①資産が特定され、かつ、②特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合に、契約はリースを含むことになります(同基準第26項)。

上記➁については、顧客が以下の(1)及び(2)をいずれも満たす場合に、顧客に「特定された資産の使用を支配する権利」が移転しているといえます(適用指針第5項)。

(1)顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。

(2)顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。

※ リースの判定前なので、「借手」ではなく「顧客」となっています。

このように、リースや賃貸借以外の契約形態で例えば、資産が介在するサービス契約のなかに、新たにリース会計の対象となるものがないかを検討する必要があります。具体例は次回ご紹介します。

リース会計基準の国際比較

今回はIFRSと米国基準に焦点を当てて、リース会計基準の国際比較をします。

・国際会計基準審議会(IASB):2016年1月に国際財務報告基準(IFRS)第16号「リース」を公表。

・米国財務会計基準審議会(FASB):2016年2月にFASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」を公表。

両基準ともに使用権モデル(原資産の引渡しにより借手に支配が移転した使用権部分に係る資産である使用権資産と、当該移転に伴う負債であるリース負債を計上します。)を採用していますが、借手の会計処理に関しては主に費用配分の方法が次のように異なっています。

IFRS第16号:リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上する単一の会計処理モデルを採用。

※ 日本の新リース会計基準も、この単一の会計処理モデルを採用しました。

Topic 842オペレーティング・リースでは通常、均等な単一のリース費用を認識する一方で、ファイナンス・リースでは減価償却費と金利費用を別個に認識するという2区分の会計処理モデルを採用。

Topic 842ではオペレーティング・リースを、均等なリース料と引き換えにリース期間にわたって原資産に毎期均等にアクセスする経済的便益を享受するものと捉えています。

暗号資産税制の国際比較

明けましておめでとうございます。本年もどうぞよろしくお願いいたします。

今回は暗号資産税制の解説の最後として、個人の所得税に絞って、暗号資産税制の国際比較を行います。

1.アメリカ

キャピタルゲイン課税

・1年以上保有した場合、最大20%までの税率で課税

・1年未満の保有の場合は、通常の累進課税

2.イギリス

キャピタルゲイン課税

一定の場合、税率20%

3.ドイツ

①1年超保有している場合には、原則、非課税

②1年以下保有の場合には、1年の利益合計が600ユーロ以下であれば非課税

4.フランス

キャピタルゲイン課税

・税率30%(ただし、累進税率が30%より低いときには累進課税を選択可)

・年間の利益が305ユーロ以下は非課税

なお、暗号資産間での交換をしてもキャピタルゲイン課税の対象になりません。

このように20~30%という固定税率が諸外国では採用されていますが、日本では累進税率となり最高税率が45%(住民税込みで55%)と諸外国に比して税負担が重くなっているため、海外に移住する暗号資産投資家が現れてきています。

そこで日本において暗号資産の業界団体、自主規制団体から一律20%の税率が適用される申告分離課税への税制改正の要望が出ています。

暗号資産に関する課税ルール

メルカリでビットコインによる決済が可能になり、暗号資産の利便性が高まる一方で、暗号資産に関する日本での課税ルールは、国民が暗号資産にアクセスしたり利用したりすることを躊躇させる内容であると批判されることがあります。暗号資産に係る所得に対する日本の税率が高いため、海外へ移住する個人投資家も現れています。そこで、今回は日本での暗号資産に関する課税ルールを取り上げ、次回は暗号資産に関する課税ルールの国際比較を行います。

1.個人の暗号資産取引による所得の区分

暗号資産取引により生じた損益は、邦貨又は外貨との相対的な関係により認識される損益とされ、原則として雑所得(所得税法35条1項、2項2号)に区分されます。但し、その年の暗号資産取引に係る収入金額が300万円を超え、かつ当該取引に係る帳簿書類の保存がある場合には、原則として事業所得(同法27条)に区分されます。いずれの場合も、総合課税の対象となるため、超過累進税率(住民税込みで最高55%)が適用されます。

※ 国税庁は、暗号資産を支払手段つまり資産の値上がり益が生じない資産として位置づけており、譲渡所得(所得税法33条1項)の基因となる「資産」には該当しないとの見解を採用しています(国税庁「雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説」参照)。

なお、暗号資産同士の交換を行った場合にも、課税が発生します(この点は法人が当該交換を行った場合も同様です)。つまり、保有するビットコインをイーサリアムに交換した場合であれば、イーサリアムをビットコインで購入したこととなり、当該ビットコインの含み益に対して課税されます。

以上のように、暗号資産取引に関しては、上場株式等に係る譲渡所得等の金額に対する課税と比較して税負担が重いため、上場株式等の場合と平仄を合わせる形で税率20%の申告分離課税等への税制改正を要望する向きがあります。

2.  法人が暗号資産を保有している場合

法人が事業年度終了の時において有する暗号資産(活発な市場が存在する暗号資産に限り、かつ特定自己発行暗号資産を除く。国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱いについて(FAQ)」参照。)につき、時価法による評価換えを行い、その際に生じた評価損益をその事業年度の益金の額又は損金の額に算入する必要があります(法人税法61条2項1号、3項)。そして翌事業年度には、この評価損益につき、洗替処理を実施します。

3.  消費税

消費税法上、支払手段及びこれに類するものの譲渡は、非課税とされているところ、国内の暗号資産交換業者を通じた暗号資産の譲渡は、この支払手段等の譲渡に当たり消費税は非課税となります(消費税法6条1項・同法別表第2第2号・同施行令9条4項)。

また、課税売上割合の算出に当たっては、支払手段等に該当する当該暗号資産の譲渡につき、非課税売上高に含めて計算する必要はありません(消費税法30条6項・同施行令48条2項1号)。

暗号資産(仮想通貨)

2024年1月にSEC(米証券取引委員会)が、代表的な暗号資産であるビットコインの現物に投資するETFを承認すると、このビットコイン現物ETFに、機関投資家(ヘッジファンド、投資銀行、長期運用を基本とする米国の年金基金)の投資マネーが流れ込み、ビットコインの価格が急上昇しました。その後12月4日に、暗号資産の推進派で、金融規制の緩和論者であるポール・アトキンス氏が、トランプ次期米大統領からSECの次期委員長に指名されると、ビットコインの価格が初めて10万ドルの大台を超えました。

昨年末比で約2.5倍の価格上昇をしているビットコインですが、暗号資産には次のような長所と短所があります。

【長所】

・発行総量に上限がある(埋蔵量に限りがある金に似ている)。

・無国籍で特定の発行体による信用リスクがない。

→インフレ耐性がある価値保存の手段となる。

【短所】

・裏付けがないため、投機的な需給で価格が動く要素が強く、短期的な価格変動が大きい。

・ブロックチェーンが暗号資産の基盤技術となるところ、暗号資産の採掘時に計算能力の高いコンピュータを稼働させるために膨大な電力を必要とし、SDGsの精神に反する。

次回は暗号資産に関する課税ルールを取り上げます。


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