でんた丸ブログ

新リース会計基準の影響

新リース会計基準が採用した使用権モデルの下では、原則として使用権資産とリース負債がオンバランスされるところ、これらの内容の詳細については今後解説していきます。

まずは新リース会計基準の適用の影響について、一覧してみます。

(1)借手はオペレーティング・リース(これまでは通常、均等な単一のリース費用を認識してきました。)についても、使用権資産とリース負債を計上した上で、その後、営業費用の区分で減価償却費を、営業外費用の区分で支払利息を別個に認識することになります。このことにより次のような影響が生じてきます。

①仕訳の増加と、それへのシステム対応

②営業外費用たる支払利息を別個に認識することによる、営業利益やEBITDAの上昇

③利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期にわたり定額で配分する場合でなく、利息相当額を利息法で会計処理する場合には、支払利息の認識が前加重(前倒し)となるため、リース期間の後半より前半の方が費用計上額が大きくなる。

④使用権資産とリース負債を計上することによる自己資本比率や総資産利益率(ROA)の低下

⑤自己資本比率の低下による、銀行借入における財務制限条項への抵触の可能性

⑥使用権資産の計上による、潜在的な減損損失の計上対象資産の増加

⑦オペレーティング・リースにより利用してきた動産について、複雑な仕訳を回避するために、リースから購入への切り替えの検討

(2)契約の法形式を問わず、実質的にリースを構成する部分が契約に含まれていると判断した場合には、借手は(1)で述べたような会計処理を行う必要があります。このことから次のような負担が生じてきます。

①役務提供契約等の中に「実質リース」や「隠れリース」が含まれていないかの洗い出し

②上記洗い出しをした上での、利用しているリースのデータ項目の一覧化

③リース料改定などの情報を入手した時点での、タイムリーな使用権資産とリース負債の再測定

(3)借手のリース期間に見積りの要素が大幅に加わりました。つまり、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間と、借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間が、解約不能期間に加わってリース期間が決定されることになります。

この「合理的に確実」といえるか否かを借手の統制下にある重要な事象又は状況から判断する必要があり、実際に当該オプションを行使する前の時点でリース期間が延長となり、使用権資産とリース負債のタイムリーな再測定をしなければならない場面が生じえます。

このように新リース会計基準の適用対象企業には、業務プロセスの変更やシステム対応といった負担が新たに生じえます。そこで、借手の負担軽減の観点から、1契約当たりのリース料が300万円以下の少額リースについては、貸借対照表への計上を不要とするのみならず原則として契約期間だけでリース期間を判断することができることとし、また、借手のリース期間が1年以内で購入オプションを含まない短期リースについても貸借対照表への計上を不要とすることができるとされました。詳細は、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」第20項ないし第23項をご覧ください。

リース会計基準の変遷

新リース会計基準が、ASBJから2024年9月に公表され、上場企業及び会社法上の大会社への適用が義務付けられることとなりました。原則的な適用時期は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からですが、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用も可能です。

そこで今回はまず、リース会計基準が、これまでどのように変遷してきたかをみます。なお、以下の基準改正の年月は、リース会計基準が公表された時点です。

元来、リース取引は、その法的形式に従い賃貸借取引として処理されてきたため、資産・負債は、リースのどの類型であってもオフバランスでした。

   ↓

【1993年6月の基準改正】

リース取引をファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引に分類し、前者については、その経済的実態に着目し、売買処理を採用しました。

ただし、所有権移転外ファイナンス・リース取引については、一定の注記を要件として賃貸借処理(以下「例外処理」という。)が例外的に認められました。

 ↓

代替的な処理が容認される理由としての本来の姿は、異なった経済的実態に対して、代替的な処理である異なる会計処理を適用することで、事実をより適切に伝えられるようにするためというものです。

しかしながら、大半の企業において、従来どおりの会計処理を行えば済む例外処理の簡便さ故に、所有権移転外ファイナンス・リース取引を賃貸借処理し、経済的実態が異ならないのに代替的な処理を選択するという特異な状況が生じていました。

 ↓

【2007年3月の基準改正】

このような特異な状況が生じないよう、例外処理は廃止されました。

これにより当時のIFRS「リース」と平仄が合うことになりました。

   ↓

2016年1月にIFRS第16号「リース」が公表され、借手において、ファイナンス・リース取引とオペレーティング・リース取引の区別をしない単一の使用権モデルが採用されました。

   ↓

【2024年9月の基準改正】

現行のIFRS「リース」と平仄を合わせる改正がなされ、以下の2点が実現しました。

①使用権を支配する権利は概念フレームワークにおける「資産」の定義を満たすため、借手は使用権資産を計上する。

②使用の有無にかかわらず、リース期間において、借手はリース料の支払い義務を負うため、借手はリース負債を計上する。

このように、今まで賃貸借処理がなされ、貸借対照表上オフバランスだったリースが、貸借対照表上オンバランスされることになりました。

新リース会計基準は、現行のIFRS「リース」の主要な定めのみを取り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ国際的な比較可能性を大きく損なわせないような基準となっています。

地方公共団体間での税源の偏在

我が国では、地方公共団体間で税源が偏在しているため、住民1人当たりの税収額の格差が極めて大きい点が問題となっています。特に地方税の計40数兆円の約2割を占める「地方法人2税」と呼ばれる法人住民税(法人税割)と法人事業税の税収が、東京都などの大都市圏に偏在しています。このような格差を是正するために、国税(国が賦課・徴収する租税)を地方公共団体に交付ないし譲与する地方交付税地方譲与税がありますが、このような名称の税目があるわけではありません。今回は具体例でこの点をみていきます。(なお、次回からはリース会計基準の改正についてみていきます。)

1.地方法人税

地方法人税法は平成26年に公布・施行され、地方税である法人住民税(法人税割)の一部を地方交付税の原資にする趣旨で、地方法人税が創設されました。地方交付税法により、国税である地方法人税の全額が一定の基準に基づき、地方公共団体に配分・交付されます。

※法人税確定申告書と地方法人税確定申告書を1つにした様式を使用することで、両申告書の提出を同時に行えるようになっています。

2.特別法人事業税

特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律は平成31年(令和1年)に公布・施行され、地方税である法人事業税(所得割・収入割)の一部(法人事業税の約3割)を分離する形で、特別法人事業税(国税)と特別法人事業譲与税が創設されました。地方譲与税の1種である特別法人事業譲与税は、特別法人事業税の全額を都道府県に譲与するものです。

※特別法人事業税は、法人事業税と同じ申告書・納付書により、法人事業税と併せて都道府県に申告納付することになり、いずれか一方のみを納付するということはできません。そして、法人事業税と併せて納付された特別法人事業税は、都道府県から国に対して払い込まれ、特別法人事業譲与税として各都道府県に再配分(譲与)されます。

このような再配分は、地方への税源移譲ではなく、国主導の財源調整という集権的手法(いわゆる「ばらまき」)であり、地方の国依存を深めているという批判があります。現に、自立して財政運営できる自治体の数(地方交付税を受け取らない不交付団体の数)は、リーマンショックを機に急減して以降、増加傾向にあるものの極めて緩やかなものにとどまり、リーマンショック前の140超の半分程度で足踏み状態にあります。

 

 

相続税の課税対象になる死亡退職金

被相続人の死亡によって、被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(これらを「退職手当金等」といい、現物で支給された場合も含まれます。)を受け取る場合で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものは、相続または遺贈により取得したものとみなされて(いわゆる「みなし相続財産」)、相続税の課税対象となります(相続税法3条1項2号)。

このように相続税の課税価格計算の基礎に算入される退職金は、退職所得(所得税法30条1項)に該当しないため所得税は課税されず(所得税基本通達9-17)、「退職所得の源泉徴収票」(注)ではなく、「退職手当等受給者別支払調書」を提出することとなります(相続税法59条1項2号)。

なお、死亡した者の退職金であっても、死亡後3年を経過してから支給が確定したものについては、相続税の課税価格計算の基礎に算入されないので、遺族の一時所得として所得税の課税対象になりますが(所得税基本通達34-2)、この場合には、「退職手当等受給者別支払調書」等の法定調書の提出を要しません。

(注)所得税法226条2項により、「退職所得の源泉徴収票」を提出するのは、退職所得に該当する退職手当等とされています。

物納

物納とは、金銭(納税適格証券及び印紙を含む。)で納付する代わりに、金銭以外の財産で納付する方法のことをいいます。国税通則法34条3項では、「物納の許可があった国税は、…国税に関する法律の定めるところにより、物納をすることができる。」と定められているところ、現在では相続税においてのみ物納が認められています(相続税法41条以下)。

1.  物納に充てることのできる財産(相続税法41条2項)

まず、納税義務者の課税価格計算の基礎となった財産である必要があるため、例えば、相続開始前から納税義務者が自ら所有する不動産を物納に充てることはできません。

※延納の制度(相続税法38条以下)が別途用意されており、納税義務者により頻繁に利用されています。

また、相続税法施行令18条に規定される管理処分不適格財産も物納に充てることができません。物納申請財産は、国に帰属させて、これを使用収益することを目的とするものではなく、当該物納申請財産の金銭的価値に着目して、国がこれを最終的に処分して国家の収入に充てることにより、金銭の納付に代わる経済的利益を得ることを目的とするものだからです。

2.  物納財産の収納価額(相続税法43条1項)

原則として、課税価格計算の基礎となった当該財産の価額となります。

3.  物納財産により納付があったものとされる時(相続税法43条2項)

物納の許可を受けた税額に相当する相続税は、物納財産の引渡し、所有権の移転の登記その他法令により第三者に対抗することができる要件を充足した時において、納付があったものとされます。

1 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 18

このページのトップへ