でんた丸ブログ

非上場株式に係る配当所得と譲渡所得の扱い【所得税法】

非上場株式に係る配当や譲渡した際の譲渡所得については、所得税法上、以下のようになっています。

・配当所得(所得税法24条1項、22条2項1号):総合課税

(但し、下記※の「少額配当」の場合には、「確定申告不要制度」を選択できます。)

・譲渡所得(租税特別措置法37条の10第1項):申告分離課税

➡ 税率:20%(所得税15%、住民税5%)

但し、令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになります。

※「少額配当」(租税特別措置法8条の5第1項1号)

一回に支払を受けるべき配当等の金額が、次により計算した金額以下である場合には、確定申告を要しません。

10万円 × 配当計算期間の月数 ÷ 12

➡  20.42パーセント(地方税なし)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。

なお、総合課税となる配当所得に関しては、一定のものを除き配当控除(所得税法92条)の適用を受けることができます(国税庁タックスアンサーNo.1250ご参照)。

以上、詳細については、国税庁タックスアンサーNo.1330(配当所得)、No.1463(譲渡所得)をご参照ください。

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(再論)

相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間(※1内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額(※2を譲渡資産の取得費(所得税法33条3項)に加算することができる、という特例があります(租税特別措置法39条1項、同法施行令25条の16)。従って、譲渡益が出る場合には、当該加算金額分だけ、譲渡所得を減らすことができます。

※1 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで

※2 その相続人の相続税額×譲渡した資産の相続税評価額/(その相続人の課税価格+その相続人の債務控除額)

相続時精算課税贈与により取得した財産(相続税法21条の14~18)を上記一定期間内に譲渡した場合でも、相続税額の取得費加算の特例は適用されます(租税特別措置法39条1項)。

なお、この特例の適用を受けるための要件や、当該加算金額の計算式の詳細については、2024年7月29日付けの本ブログをご参照ください。

防衛特別法人税

令和7年3月31日に公布された「所得税法等の一部を改正する法律(令和7年法律第13号)」により「我が国の防衛力の抜本的な強化等のために必要な財源の確保に関する特別措置法」が改正され、防衛特別法人税が創設されました(令和7年度税制改正)。

令和8年4月1日以後に開始する各事業年度に課され、以下の算式で防衛特別法人税の税額が計算されます。納付額が0となっても、ゼロ申告が必要となります。

防衛特別法人税=(基準法人税額(※)-基準控除額500万円)× 4%

※ 基準法人税額:所得税額控除等適用前の法人税額

防衛特別法人税の創設により、令和7年3月期決算の税効果会計の適用における令和8年4月1日以後開始事業年度に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債の計算の際に用いる法定実効税率が、以下のように変わります。

・法定実効税率の計算式の分子

=法人税率×(1+地方法人税率+防衛特別法人税率+住民税率)+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率

・法定実効税率の計算式の分母

=1+事業税率+事業税率(標準税率)×特別法人事業税率

法人税率における基本税率と軽減税率

前回、法人税率における基本税率を取り上げました。しかし、法人によっては基本税率23.2%ではない軽減税率が適用される場合があります。今回は、どのような法人に対して、どのような形で軽減税率が適用されるのかをみていきます。

法人は内国法人と外国法人にまず区分され、前者は所得の源泉地を問わず、全ての所得について納税義務を負うことになります(法人税法(以下省略)4条1項、5条)。一方で、後者は、国内源泉所得(138条)についてのみ納税義務を負います(4条3項、8条)。ここでは内国法人に絞って解説します。

内国法人は以下のように区分されます(2条5~9号)。

① 中小法人以外の普通法人と、中小法人(66条2項、5項参照)

②-1   一般社団法人等(別表第2に掲げる非営利型の一般社団法人および一般財団法人、公益社団法人、公益財団法人。これらは全て公益法人等に含まれます。定義規定:66条1項第1かっこ書。)

※  公益認定を受けていない一般社団法人・一般財団法人のうち、非営利型法人以外の法人は、普通法人(上記①)として取り扱われます(注1)。

②-2   人格のない社団等(マンション管理組合など)

③-1   一般社団法人等以外の公益法人等(学校法人、宗教法人、商工会議所、日本公認会計士協会など)

③-2   協同組合等(農業協同組合、信用金庫など)

④ 公共法人(地方公共団体など)

 

【納税義務の範囲】

1.公共法人(上記④)

公共性の高さゆえに、法人税を納める義務はありません(4条2項)。

2.公益法人等(上記②-1と③-1)、人格のない社団等(上記②-2

収益事業から生じた所得のみが課税対象となります(4条1項但書、6条)。

3.その他の法人(上記①と③-2

全所得が課税対象です(4条1項本文)。

 

【税率】

1.上記①、②について

・66条1項により、23.2%の基本税率が適用されます。

・ただし、66条2項により、普通法人のうち、各事業年度終了の時において資本金の額若しくは出資金の額が1億円以下であるもの(若しくは資本若しくは出資を有しないもの)又は人格のない社団等で、所得年800万円以下の部分は、19%の軽減税率が適用されます。もっとも、66条5項による一定の例外があります。

➡ 下記3.のとおり、所得年800万円以下の部分は、租税特別措置法により19%の軽減税率は更に低くなり15%となります。

2.上記③について

66条3項により、軽減税率19%が適用されます。

➡ 下記3.のとおり、所得年800万円以下の部分は、租税特別措置法により19%の軽減税率は更に低くなり15%となります。

3.租税特別措置法における「法人税法の特例」

租税特別措置法42条の3の2により、上記①のうちの中小法人及び上記②、③については、政策的に、所得年800万円以下の部分において、軽減税率の特例として、15%(ただし、所得の金額が年10億円を超える事業年度については、17%)の法人税率が時限的に適用されています。

(注1公益法人等(定義規定:2条6号)に含まれない、つまり別表第2に掲げられていない、非営利型ではない一般社団法人および一般財団法人は、普通法人(定義規定:2条9号)に区分される点にご注意ください。

(注2人格のない社団等(2条8号)は、3条により法人税法上は法人とみなされます。また、人格のない社団等の概念は、いわゆる権利能力のない社団または財団という私法上の概念と同義とされています。

なお、人格のない社団等には民法上の組合(民法667条)や匿名組合(商法535条)は含まれません(法人税基本通達1-1-1)。

法人税率の推移

法人税の税率は、昭和59年度以降、現在に至るまで一貫して低下してきました。基本税率でみると、昭和59年度は43.3%でしたが、現在はその約半分の23.2%です。理由として、経済がグローバル化する中で、法人税率を諸外国より低くすることで、諸外国から投資を呼び込むとともに、国内の企業が法人税率の低い諸外国へ移転するのを防ぐという点が挙げられます。

2024年1月時点の諸外国における法人実効税率(法人所得に対する国税と地方税を合わせた税率)は以下のようになっています(財務省HP参照)。

・ドイツ:29.93%

・日本:29.74%

・米国:27.98%

・カナダ:26.50%

・フランス:25.00%

・英国:25.00%(最高税率)~19%

・イタリア:24.00%

このように、日本はドイツに次いで法人実効税率が高いのですが、他の先進国に比べ断トツに高いわけではないことが分かります。これは日本を含む先進国が法人税の引下げ競争を行ってきた結果といえます。このような競争が続くと、最終的には法人税率がゼロになるまで競争が続けられるのではないかという懸念がなされ、「税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting、略してBEPS)」防止の観点から、税率15%のグローバル・ミニマム課税が令和5年度税制改正により導入されました。この令和5年度税制改正は、2021年(令和3年)10月にOECD/G20の「BEPS包摂的枠組み」において合意されたグローバル・ミニマム課税へ対応するためになされました。


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