でんた丸ブログ

一括償却資産

前回、少額減価償却資産を取り上げました。この少額減価償却資産の根拠条文は法人税法施行令133条及び所得税法施行令138条となりますが、その次の条文、つまり法人税法施行令133条の2及び所得税法施行令139条にそれぞれ、一括償却資産の損金算入及び必要経費算入が規定されています。一括償却資産の取得価額は20万円未満となるところ、この取得価額の判定の単位も、取得価額が10万円未満の少額減価償却資産と同様に考えることになります(法人税基本通達7-1-11、所得税基本通達49-39)。

(注)中小企業者等が、取得価額が30万円未満である減価償却資産を平成18年4月1日から令和8年3月31日までの間に取得などして事業の用に供した場合には、一定の要件のもとに、その取得価額に相当する金額を損金の額に算入することができます(租税特別措置法67条の5)。この租税特別措置法上の特例の適用を受ける資産は、同措置法上の特別償却、税額控除、圧縮記帳の重複適用を受けることはできません(租税特別措置法53条)。また、法人税法における少額減価償却資産や一括償却資産の損金算入の制度を適用した場合にも、この租税特別措置法上の特例の適用はありません(租税特別措置法67条の5第4項)。

少額減価償却資産該当性の基準

減価償却資産の減価償却については法人税法31条に定められているところ、その減価償却の特例として、法人税法65条の委任を受けて設けられた法人税法施行令133条があります。つまり、①使用可能期間が1年未満又は②取得価額が10万円未満のいずれかを満たすものを少額の減価償却資産とし、その取得価額に相当する金額を、当該資産を取得した法人がその事業の用に供した事業年度において損金経理した場合には、その損金経理した金額を損金に算入することができます。なお、所得税法49条2項・所得税法施行令138条に同様の規定があります。

今回は上記②の取得価額10万円未満か否かにつき、どの単位で判定するかについて検討します。この点については、法人税基本通達7-1-11があり、通常1単位として取引されるその単位ごとに判定するものとされています(国税庁タックスアンサーNo.5403参照)。

【例】

・「応接セット」として椅子がテーブルとセットで販売されている場合、当該椅子が10万円未満であるか否かで判定するのではなく、当該椅子とテーブルのセット(1組)で10万円未満となる必要があります。

・カーテンの場合、1枚で機能するものではなく、一つの部屋で数枚が組み合わさって機能するため、一つの部屋で使用されているカーテンの合計金額が10万円未満である必要があります。

2つ目のカーテンの例からも分かるように、当該資産が資産としての機能を発揮できる単位という点も考慮して少額減価償却資産該当性が判断されています(NTTドコモ事件[最判平成20・9・16民集62巻8号2089頁]参照)。

有価証券報告書の定時株主総会前の開示

今までは3月決算の上場企業であれば、6月下旬に定時株主総会が開催され、当該総会の日に有価証券報告書が提出・公開されるという実務がありました。しかし、これでは株主が有価証券報告書を閲覧し、株主総会における議案に対する賛否について態度を決するに当たり、十分な時間を確保できないという問題点がありました。そこで、有価証券報告書を株主総会の日の3週間以上前に開示しようという運動が、機関投資家からの要望を発端として、活発化しています。そうなると、外部監査人による金融商品取引法監査の時間を十分に確保する要請もあるため(当該監査を受けた財務諸表を有価証券報告書に記載する必要があります。)、有価証券報告書の作成の前倒しではなく、株主総会の日を後倒しにしようということになります。

ここで配当決議は株主総会決議事項とされており(会社法454条1項)、また、基準日から3カ月以内に株主総会を開催する必要がある(同法124条2項)ため、株主総会の日を後倒しにするとなると、配当基準日を議決権基準日と共に変更することとなり、配当の権利確定や配当金の支払いが従来より遅れることになります。

もっとも、会社法459条1項という特則により、同項所定の会社は配当決議を定款の定めにより取締役会決議事項にすることができます。この場合には、配当基準日を議決権基準日に合わせて後倒しする必要はなく、従来どおり期末日を配当基準日にすることが可能となり、配当の権利確定や配当金の支払いを従来どおりのスケジュールで行うことが可能です。現在、上場企業の約半数で、配当決議を取締役会決議事項にしています。

なお、米国では、配当は株主総会決議事項ではなく、株主が、役員の選任議案への賛否を通して配当決議に影響力を及ぼすという仕組みになっています。

税務訴訟における当事者・代理人・補佐人

税務訴訟における被告である国側については、「国の利害に関係のある訴訟についての法務大臣の権限等に関する法律」1条により、法務大臣が国を代表することになります。その結果、訴状では「被告国 代表者法務大臣〇〇〇〇(氏名)」と記載されます。ただ実際に訴訟事案を取り扱うのは、法務省訟務局や法務省の地方支分部局である法務局(訟務部)・地方法務局(訟務部門)となります。これは、戦後、国の利害に関係のある争訟(裁判所で解決される当事者間の具体的な法律上の紛争)は全て、法務省が統一的・一元的に行うという訟務制度が創設されたことによるものです。なお、被告側の指定代理人として、法務省に所属する訟務検事や訟務官の他に、国税庁の執行機関である各国税局や沖縄国税事務所に所属する国税訟務官が関与することもあります。

一方、税務訴訟の原告である納税者側についてですが、従来からの訴訟代理人に加えて、税務の専門家である税理士が補佐人に就任するケースがあります。これは、平成13年の税理士法改正により補佐人制度が創設されたことによるものです(税理士法2条の2参照)。日本税理士会連合会は、訴訟代理人である弁護士が出廷しなくとも、裁判所の許可を得ずに出廷及び陳述ができるよう運動を展開しており、昭和48年の「税理士法改正要望書」以来、税理士が訴訟代理人になることを可能にする法改正を目指しています。

税理士法2条の2

第1項 税理士は、租税に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述することができる。

第2項 前項の陳述は、当事者又は訴訟代理人が自らしたものとみなす。ただし、当事者又は訴訟代理人が同項の陳述を直ちに取り消し、又は更正したときは、この限りでない。

租税法研究は科学か宗教か

前回、租税法研究を社会科学の一分野と位置付けて、租税法研究の本場は米国であると述べましたが、租税法研究を含む法学を科学だというと違和感を感じる人が一定数おられて、そのような方々は法学を宗教のようなものと思っているようなところがあります。

ここで面白い話があるので、ご紹介いたします。1955年頃に、アイゼンハワー大統領顧問を務めるなど、世界的に著名な行政法学者であるW.Gellhornコロンビア大学ロースクール教授兼東大客員教授が来日した際に、スタッフ・セミナーが設けられました。当時、日本には同じく行政法学者として田中二郎先生(1906~1982)がおられ、そのセミナーの参加者が、事あるたびに「田中教授の説によれば」とか「行政法の権威である田中教授によれば」と言ったそうです。それを聞いたW.Gellhorn教授は、そのたびに不快感を示し、「田中先生はgeneralissimoか」とつぶやいたそうです。米国では、「Authorityという言葉は、教授に対しては使わず、強制通用力を有する最高裁の判決か行政決定に対してしか使わない」というのが背景にあったようです。


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