でんた丸ブログ

混合配当

混合配当とは、資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当のことです。(注)にあるように個人株主も法人株主と同様の議論ができるため、ここでは法人株主を念頭に置いて議論を進めていきます。原資が利益剰余金のみであり資本剰余金の額の減少に伴うものではない剰余金の配当については法人税法(以下省略)23条1項1号が適用される一方で、混合配当は資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当となるため、24条1項4号(資本の払戻し)が、混合配当の全体に適用されることとなります(最判令和3年3月11日民集75巻3号418頁の国際興業管理株式会社事件)。混合配当を受けた法人株主においては、結論として、次のような取扱いをすることになります(国税庁HP令和3年10月25日付「最高裁判所令和3年3月11日を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」及び上記判例を参照)。

①利益剰余金を原資とする部分については、その全額を利益部分(法人がその事業活動により獲得した金額で株主等に分配することなく留保している部分)の分配として扱い、資本部分(法人の財産のうち株主等から出資を受けた部分)の払戻しとして扱うことは予定していない。

②資本剰余金を原資とする部分については、資本部分の払戻し(※)と利益部分の分配とに分ける。資本部分の払戻しの上限金額は、資本剰余金を原資とする部分の金額(減少資本剰余金額)とする(法人税法施行令23条1項4号イ、ロの柱書第二括弧内の最終括弧)。

(※)資本部分の払戻しの金額は、法人税法施行令23条1項4号イでは、「当該払戻し等を行つた法人(イにおいて「払戻等法人」という。)の当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等を当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額」として計算されます。また、上記の払戻等対応資本金額等は以下の計算式により計算されます。

払戻等対応資本金額=払戻直前の資本金等の額×(減少した資本剰余金÷当該払戻し等の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の簿価純資産価額):この下線部分は法人税法施行令119条の9では「払戻等割合」と定義されています。

上記①と②において、利益部分の分配とされた金額が、23条1項1号の配当とみなされます(みなし配当)。また、資本部分の払戻しの金額は、有価証券の譲渡対価(61条の2第18項)と認識する金額になります。なお、剰余金の配当を行った法人の側は、この利益部分の分配とされた金額だけ利益積立金額を減算することになります。

(注)法人株主ではなく、個人株主の場合には、次のように読み替えてください。

・法人税法23条1項1号    → 所得税法24条1項

・法人税法24条1項4号    → 所得税法25条1項4号

・法人税法施行令23条1項4号 → 所得税法施行令61条2項4号

みなし配当課税

配当について租税法は会社法の概念を借用しながらも、法人税法24条、所得税法25条において「みなし配当」という概念を創設しています。この結果、(Ⅰ) 法人段階で所得に対して法人税の課税がなされた後で更に、(Ⅱ) みなし配当事由(※)により金銭その他の資産の交付を受けた側で、当該資産の交付額のうち原資の回収にあたらない部分に対し「みなし配当課税」がなされることになります。法人株主については、原則として受取配当等は益金不算入となるため(2025年5月19日付け本ブログ参照)、ここでは個人株主を想定して話をすすめていきます。

法人に対し出資された財産を原資にして当該法人が稼いだ所得に対する課税として、当該法人段階の法人税の課税だけでなく、「みなし配当」という概念が創設されていることで、当該法人の株主段階の課税も加わり、二段階課税が貫徹されることになります。仮に「みなし配当」という概念がなかったとすると、法人段階の法人税の課税だけになり、二段階課税が貫徹されないことになります。現行法では、二段階課税を貫徹した上で、当該法人の個人株主段階において配当控除(所得税法92条)が手当てされており、法人段階の法人税の課税と、当該法人の個人株主段階の課税が不完全ながらも統合されています。

(※)主な、みなし配当事由は、以下のとおりです。

①適格合併を除く合併(法人税法24条1項1号、所得税法25条1項1号)

②適格分割型分配を除く分割型分配(法人税法24条1項2号、所得税法25条1項2号)

③適格株式分配を除く株式分配(法人税法24条1項3号、所得税法25条1項3号)

④剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)

⑤解散による残余財産の分配(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)

⑥自己株式の取得(法人税法24条1項5号、所得税法25条1項5号)

(参考)

現物配当が適格現物分配に該当する場合には、所得税法24条1項かっこ書により、配当所得の対象となる配当等の範囲から除かれているため、適格現物分配に該当する現物配当を行う法人は、源泉徴収義務(同法181条)を負いません。

査察部(マルサ)

2025年4月21日付けの本ブログでは、国税局の資料調査課をご紹介しました。今回は国税局の査察部をご紹介します。査察部では悪質な脱税者に対して、強制調査(ガサ)を含む査察調査を行っています。脱税なので刑事事件となる点が、「任意調査のエキスパート集団」である資料調査課の扱う事案とは異なります。査察調査の流れは①情報事務と②調査事務に区分けされます。

① 情報事務

様々な媒体から、課税・徴収漏れに関する情報収集をします。

収集した情報の内容と申告事績等を照合し、脱税が疑われる対象者(犯則嫌疑者)を抽出します。

脱税の規模や手口などをより具体的に確認するための内偵調査を行います。

内偵調査の結果、多額の脱税が見込まれ、手口も悪質と認められるなど、社会的非難に値する犯則嫌疑者について、脱税事件としての着手がなされる。

強制調査を実施するために、裁判所へ許可状を請求する。

② 調査事務(国税通則法第11章参照)

強制調査を実施し、証拠物件等を差し押さえる。

質問調査の際の供述内容や証拠物件を分析・検討し、精査を重ねる。

検察官へ告発する場合には、検察官への告発資料を作成し、検察官へ告発する。

 

全国で約1,500名の国税査察官が上記の職務に当たり、東京国税局査察部には約550名が在籍しています。

非上場株式に係る配当所得と譲渡所得の扱い【所得税法】

非上場株式に係る配当や譲渡した際の譲渡所得については、所得税法上、以下のようになっています。

・配当所得(所得税法24条1項、22条2項1号):総合課税

(但し、下記※の「少額配当」の場合には、「確定申告不要制度」を選択できます。)

・譲渡所得(租税特別措置法37条の10第1項):申告分離課税

➡ 税率:20%(所得税15%、住民税5%)

但し、令和19年までは、復興特別所得税として各年分の基準所得税額に2.1パーセントを乗じた額を所得税と併せて申告・納付することになります。

※「少額配当」(租税特別措置法8条の5第1項1号)

一回に支払を受けるべき配当等の金額が、次により計算した金額以下である場合には、確定申告を要しません。

10万円 × 配当計算期間の月数 ÷ 12

➡  20.42パーセント(地方税なし)の税率により所得税および復興特別所得税が源泉徴収されます。

なお、総合課税となる配当所得に関しては、一定のものを除き配当控除(所得税法92条)の適用を受けることができます(国税庁タックスアンサーNo.1250ご参照)。

以上、詳細については、国税庁タックスアンサーNo.1330(配当所得)、No.1463(譲渡所得)をご参照ください。

相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例(再論)

相続または遺贈により取得した土地、建物、株式などの財産を、一定期間(※1内に譲渡した場合に、相続税額のうち一定金額(※2を譲渡資産の取得費(所得税法33条3項)に加算することができる、という特例があります(租税特別措置法39条1項、同法施行令25条の16)。従って、譲渡益が出る場合には、当該加算金額分だけ、譲渡所得を減らすことができます。

※1 相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで

※2 その相続人の相続税額×譲渡した資産の相続税評価額/(その相続人の課税価格+その相続人の債務控除額)

相続時精算課税贈与により取得した財産(相続税法21条の14~18)を上記一定期間内に譲渡した場合でも、相続税額の取得費加算の特例は適用されます(租税特別措置法39条1項)。

なお、この特例の適用を受けるための要件や、当該加算金額の計算式の詳細については、2024年7月29日付けの本ブログをご参照ください。

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