でんた丸ブログ

AIの限界

前回は、AIが仕事の生産性を高めるというプラスの側面について書きました。コンピュータは昔から計算や記憶が得意ではありましたが、最近では、大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIが登場し、人間に近い流暢な会話をすることまで可能となりました。

しかし、AIは手段にすぎず、またAIに限界があるのも事実です。生成AIは、過去の膨大な人間活動や知識を学習しますが、まず、その学習元となる膨大なデータの信頼性を評価する必要があります。更に、ディープラーニング(深層学習)をした生成AIが平然と事実と異なる答えを導き出してしまうhallucination(ハルシネーション、幻覚)と呼ばれる現象も生じるために、生成AIの出力内容の信頼性を人間が評価する必要があります。生成AIの出力内容には偏りや虚偽が平然と紛れ込んでいるという事実があるため、生成AIがどのような情報を学習した上で、どのような出力過程を経て出力をしているのかを正しく理解して利用しなければなりません。

生成AIを上手に利用して、より人間らしい経済の姿を築き、人間らしい生活を享受することが重要なことであり、それが目的、Visionです。そうすると、「人間とは何か」ということが問われ、それについて各人が考えていく必要があります。例えば、倫理(生き方の中で中心にあるもの、モラル)観といったものは生成AIには備わっておらず、人間に備わっているものです。また、人間一人一人が、機械とならずに自分の頭で考え、意思をもって行動したり、コミュニケーションする、というのもAIにはできない人間の特徴です。まさに生成AIの登場は、18世紀後半にイギリスで起こった産業革命だけでなく、人間の精神を解放した「ルネサンス」(14~16世紀のヨーロッパで、中世のしきたりに囚われず、人間らしさを求めた新しい文化の動き)にもなぞらえることができるでしょう。

AIは敵か味方か

第1次産業革命が英国で起こり水力や蒸気機関を動力源とする紡績機が出現すると、職を奪われた労働者が、労働環境の改善を求め機械や工場建築物を打ち壊すという運動が起きました(ラッダイト運動、1811年~1817年)。現代のAIにおいても、AIの発展により職を奪われる人がいます。CMではAIキャラクターが使われ始めました。出演者とのスケジュール調整も要らずに低コストで魅力的なAIキャラクターを作ることができるようになり、しかもAIキャラクターには不祥事が生じません。AIにより職を奪われる人から見れば、AIは敵といえそうです。

しかし、AIは明らかに生産性を高めます。AIの発展により職を奪われる人も、新たな能力を獲得しAIを上手に利用して高付加価値な人材となる必要があります。国もこのような人達を支援するために、リカレント教育に対し教育訓練給付制度を設けています。著作権といった法的な制度整備も進められています。AIを敵とみなすのではなく、AIと共存できる能力を磨き、AIを味方につけ生産性を向上させるという発想の転換が求められています。

では、AIと共存できる能力を磨いた高付加価値な人材像とは、どのようなものなのでしょうか。次回は、この点について考えてみたいと思います。

監査法人

監査法人は法人税法上、普通法人に区分されますが、公認会計士法34条の2の2により設立が認められているという点で特殊です。以前紹介した公認会計士法1条(公認会計士の使命)と同法1条の2(公認会計士の職責)は、監査法人に準用されます。経営の神様が発する松下幸之助の言葉よりも、これらの法律の条文に何が書かれているのかの方が優先されるのです。この点、日本公認会計士政治連盟は、国会議員と密に意見交換することにより、公認会計士法をはじめとした公認会計士に関わる法制度の改善を図っています。

製品に品質の高低があるのと同様に、監査の品質にも高低があります。しかし、今までは監査報告書が短文式で定型的な表現で書かれていたため、監査法人ごとの違いが外部からは分かりにくい状況にありました。そこで、2021年3月期からは、一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社に対してはKAM(監査上の主要な検討事項)を監査報告書に記載することが義務付けられました。また、監査法人のガバナンス・コードにより原則として監査法人の透明性を高めることが求められています。

経営の神様

年初に、現代における先見力と行動力の重要性について書きました。このことは経営にも当てはまり、先見力を駆使して目標を掲げ、熱意をもってその目標の実現に向けリーダーシップを発揮し、組織を動かす行動力が求められます。

アナリストのように将来を予測するだけではなく、経営者には行動力も求められます。この点、Panasonicを創業した松下幸之助は、経営の神様といってよいでしょう。松下幸之助(1894年~1989年)は、自らの行動力に裏付けられた心に響く言葉を駆使して、仕事を人に任せ、1933年には事業部制という分権的組織を作りました。そして、この組織は、様々な高品質の家電を世に送り出し、家事労働の負担を軽減するなど人々の暮らしを豊かにし、社会に貢献しました。

松下幸之助は、企業が適正に儲けて税金を払うことにより、国家を富ませようとしました。適正に儲ける経営の先に国家を意識しており、赤字法人でもかまわないというオーナー企業とは異なる企業観の持ち主だったことが窺えます。

【消費税・法人税】簡易課税・2割特例適用者に対する特例の新設

簡易課税制度や2割特例を適用する事業者(以下「簡易課税適用者等」という。)については、インボイスの保存が仕入税額控除の要件とされていないことなどに鑑みて、取引の相手方がインボイス発行事業者か否かの確認を不要とすることができる以下の特例が、令和6年度税制改正大綱に盛り込まれました。すなわち、簡易課税適用者等は、令和5年10月1日以後に国内において行う課税仕入れについて、税抜経理方式を適用した場合の仮払消費税等として計上する金額につき、継続適用を条件として、当該課税仕入れに係る支払対価の額に110分の10(軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、108分の8)を乗じた金額とすることが明確にできるようになりました。

この税制改正大綱を受けて、消費税に係る経理処理方法についての所要の見直しとして、国税庁は、令和5年12月27日付で、「消費税法等の施行に伴う法人税の取扱いについて」という法令解釈通達を一部改正しました。これにより、法人税に係る法令の規定及び通達の定めの適用についても、上記特例と同様とすることが明確にできるようになりました。

つまり、簡易課税適用者等が上記特例を選択適用すれば、インボイス発行事業者以外の者からの課税仕入れであったとしても、仮払消費税等の額として経理した金額を、取引の対価の額に算入して法人税の課税所得金額の計算を行うという必要が明確になくなりました。


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