でんた丸ブログ

法人株主が配当金を受け取る場合の法人税の取扱い

今回は、株主が配当金を受け取るとして、当該株主が法人である場合にどのように法人税がかかってくるのかを考えてみます。

まず、受取配当等は法人税法23条により益金不算入とされます。その趣旨は、法人段階において、二重課税を含む多重課税を排除する点にあります。法人間で配当が繰り返される場合を考えると、最初に法人が配当をする際には当該法人の利益から法人税が引かれた後の税引後の利益から配当がなされます。仮に法人税法23条がないとすると、当該法人から配当を受けた二番目の法人は、その配当を含む利益から更に法人税が引かれてしまいます。これでは一番目の法人が稼いだ利益に対して法人をまたいで二重に課税していることになってしまい、課税のしすぎということになります。このような多重課税を排除する観点から、昭和25年にシャウプ勧告を受けて受取配当金益金不算入制度が導入され、昭和63年の改正までは、法人株主であれば、株式等の保有割合に関係なく、受取配当の全額が益金不算入とされていました。

その後、法人税法の平成14年度改正、平成27年度改正を経て現行23条に至っています。これらの改正の中で、受取配当等が益金不算入となる割合は、株式等保有割合が低くなるにつれ縮小されていきました。つまり、法人税法の税率が徐々に低くなっていく中で、税収を確保するために、法人税の課税ベースが拡大していったのです。

現行23条の内容は次のとおりです。

● 完全子法人株式等(株式等保有割合:100%)及び関連法人株式等(株式等保有割合:3分の1超)

⇒益金不算入割合:100分の100

● その他の株式等(株式等保有割合:5%超3分の1以下)

⇒益金不算入割合:100分の50

● 非支配目的株式等(株式等保有割合:5%以下)

⇒益金不算入割合:100分の20

なお、令和2年度改正では、関連法人株式等と非支配目的株式等における株式等保有割合の判定の際には、当該内国法人との間に完全支配関係がある他の法人が保有する株式の数も含めて判定することとなりました(23条4項第1かっこ書、同条6項第1かっこ書)。

社内飲食費の法人税法上の扱い

前回述べたように、社内飲食費は、交際費等の範囲から除外される「飲食費」に該当せず、交際費等に該当する費用になるところ、条文上の根拠は次のようになります。

租税特別措置法61条の4第6項をみると、

「第一項に規定する接待飲食費とは、同項の交際費等のうち飲食その他これに類する行為のために要する費用(専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するものを除く。第二号において「飲食費」という。)であつて、その旨につき財務省令で定めるところにより明らかにされているものをいう。」[下線部分は筆者]

と書いてあり、上記かっこ書内の「専ら当該法人の法人税法第二条第十五号に規定する役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出するもの」が社内飲食費に該当します。

従って、社内飲食費は交際費等の額のうちの接待飲食費には該当せず、また交際費等の範囲から除外される「飲食費」(租税特別措置法61条の4第6項第2号)にも該当しないことになります。

※ 中小法人は、①800万円までの交際費等の全額損金算入、②接待飲食費の50%の損金算入(注1)の選択適用が認められています。

(注1)接待飲食費の50%の損金算入の適用は、中小法人以外の法人(事業年度終了日における資本金等の額が100億円以下の法人に限る。)にも認められています。

交際費等の範囲から除外される「飲食費」の基準

昨今の物価上昇により、居酒屋で飲食をすると5,000円超の支払いになることが多くなりました。このような物価の状況を受けて、令和6年度の税制改正では、交際費等の範囲から除外される「飲食費」の基準が5,000円以下から1万円以下に引き上げられました(租税特別措置法61条の4第6項2号、同法施行令37条の5第1項)。1人当たりの「飲食費」が1万円超となると、5,000円超過部分だけではなく全額が交際費等となり、原則として損金不算入となります(同法61条の4第1項)。今回は、この「飲食費」(同法61条の4第6項2号)の範囲について個人的に気になった点を取り上げます(国税庁「交際費等(飲食費)に関するQ&A」参照)。

1.当該「飲食費」の範囲に含まれるもの

・得意先等の業務の遂行や行事の開催に際して、弁当の差入れを行うための「弁当代」(この場合の対象となる弁当は、得意先等において差入れ後相応の時間内に飲食されることが想定されるものを前提としています。)

・飲食等のためにテーブルチャージ料やサービス料等として飲食店等に対して直接支払うもの

2.当該「飲食費」の範囲から除かれるもの

・社内飲食費(専ら当該法人の役員若しくは従業員又はこれらの親族に対する接待等のために支出する飲食費)

→他の会議費等の費用として交際費等の範囲から除かれる場合があります。

※ 接待する相手方が親会社の役員等の場合には社内飲食費に該当しません。

・接待・供応に当たる飲食等を目的とした送迎という行為のために要する費用として支出したもの(接待等を行う飲食店等へ得意先等を送迎するため自社が負担した送迎費)

・ゴルフ・観劇・旅行等の催事を実施することを主たる目的とする一連の行為の一つとして実施される飲食等の費用

(注)

飲食費が1人当たり1万円以下か否かを判定する際は、その飲食費を支出した法人の適用している税抜経理方式又は税込経理方式に応じ、前者であれば消費税等の額を含めず、後者であれば消費税等の額を含めて判定することになります。

総則6項の適用

昨年10月に、「財産評価基本通達6項の適用を巡る判決」と題するブログを書きました。この総則6項が適用された事案は、総則6項の適用に係る判断枠組みを示した最高裁令和4年4月19日判決以降、増加しています。総則6項の適用に当たっては、国税庁長官の指示に基づいて国税局の資料調査課が調査を担当します。そこで、今回は国税局の資料調査課についてご紹介いたします。

資料調査課は課税部に属するところ、刑事事件を扱う査察部のような強制調査はできず、任意調査を行います。ただし、裁判を前提に証拠固めをする点では、共通しており、反面調査に入り、取引先や銀行から資料を収集し、「任意調査のエキスパート集団」と呼ばれています。税務署による税務調査に比し、資料を収集できるまで、より頑張るため、税務署よりも資料調査課の方が「悪徳者にとっては畏怖の的」になっているようです。

東京国税局を例にとると、税務署だけでは十分な調査ができない「調査困難事案」や租税回避事案等の「課税困難事案」を積極的に調査する組織は次のようになっています。

<個人を基幹として調査を実施する部署>

課税第一部

資料調査第一課:調査非協力及び不正常習者や事業等の規模が大きい個人事業者等を対象に、国税局の職員のみ又は税務署の職員と合同で調査を実施

資料調査第二課:相続税調査の専門家集団

資料調査第三課:国際事案専門の、個人課税系統・法人課税系統・資産課税系統の職員が配属された混成の部署

<法人を基幹として調査を実施する部署>

課税第二部

資料調査第一課:事業規模が大きく、全国的に広域に展開する法人を対象に、原則として国税局の職員のみで調査を実施

資料調査第二課:税務署だけでは十分な調査を実施することが困難と認められる法人に対して、国税局の職員が主導して税務署の職員と合同で調査を実施

資料調査第三課:海外取引法人や公益法人等に対して、第一課と同様に原則として国税局の職員のみで調査を実施

税務行政

国税庁は、昭和24年に大蔵省(当時)主税局から税務執行面を分離する形で、内国税(国税のうち関税、とん税及び特別とん税を除いたもの。)に関する賦課徴収を担当する外局として発足しました。開庁式の祝辞でハロルド・モス氏(元GHQ内国歳入課長)は、国税庁のスローガンとして「Respect among the honest; Fear among the dishonest(正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的)」と述べたそうです。

国税庁職員の令和6年度の定員は、5万6380人となっており、職員は以下の各部署に配置されています。

・国税庁本庁:1,110人(構成比2.0%)

・税務大学校:328人(同0.6%)

・国税不服審判所:464人(同0.8%)

・11の国税局と沖縄国税事務所:16,744人(同29.7%)

・524の税務署:37,734人(同66.9%)

国税庁職員になるためには、主に

・国家公務員採用総合職試験(令和6年4月1日付で14人採用)

・国税専門官採用試験(令和6年4月1日付で945人採用)

・税務職員採用試験(令和6年4月1日付で713人採用)

などの試験に合格する必要があります。

国税庁本庁は霞が関の財務省本省と同じ敷地に所在し、東京国税局(管轄:東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)は、築地にある朝日新聞東京本社の隣に所在しています。

(注)

財務省主税局:租税制度の調査、企画、立案を担当する機関

財務省の関税局と税関:関税、とん税及び特別とん税に関する制度の調査、企画、立案及びその賦課徴収を担当する機関


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