でんた丸ブログ
税務行政
国税庁は、昭和24年に大蔵省(当時)主税局から税務執行面を分離する形で、内国税(国税のうち関税、とん税及び特別とん税を除いたもの。)に関する賦課徴収を担当する外局として発足しました。開庁式の祝辞でハロルド・モス氏(元GHQ内国歳入課長)は、国税庁のスローガンとして「Respect among the honest Fear among the dishonest(正直者には尊敬の的、悪徳者には畏怖の的)」と述べたそうです。
国税庁職員の令和6年度の定員は、5万6380人となっており、職員は以下の各部署に配置されています。
・国税庁本庁:1,110人(構成比2.0%)
・税務大学校:328人(同0.6%)
・国税不服審判所:464人(同0.8%)
・11の国税局と沖縄国税事務所:16,744人(同29.7%)
・524の税務署:37,734人(同66.9%)
国税庁職員になるためには、主に
・国家公務員採用総合職試験(令和6年4月1日付で14人採用)
・国税専門官採用試験(令和6年4月1日付で945人採用)
・税務職員採用試験(令和6年4月1日付で713人採用)
などの試験に合格する必要があります。
国税庁本庁は霞が関の財務省本省と同じ敷地に所在し、東京国税局(管轄:東京都、神奈川県、千葉県、山梨県)は、築地にある朝日新聞東京本社の隣に所在しています。
(注)
財務省主税局:租税制度の調査、企画、立案を担当する機関
財務省の関税局と税関:関税、とん税及び特別とん税に関する制度の調査、企画、立案及びその賦課徴収を担当する機関
「資産の販売等」に係る収益と、それ以外の収益の益金算入時期
前回は損害賠償請求権の認識基準として実現主義や権利確定基準が採用されており、法人税法22条4項の公正処理基準が根拠とされていると書きました。この22条4項においては、平成30年度改正の際に、「別段の定めがあるものを除き」という文言が追加され、当該「別段の定め」として同法22条の2が創設されました。22条の2は、企業会計基準基準第29号「収益認識に関する会計基準」制定に際して、「資産の販売等」に係る収益を益金として認識する時期と額について定めたものです。
22条の2はこのように「資産の販売等」に係る収益を適用対象としており、これ以外の例えば損害賠償請求権といった収益は適用対象外です。従って、平成30年度改正で22条の2が創設された後でも、損害賠償請求権の益金算入時期は22条4項に基づき実現主義や権利確定基準により判断されます。
以上をまとめると、次のようになります。
・「資産の販売等」に係る収益の益金算入時期の根拠条文→22条の2第1項~第3項
・それ以外の収益の益金算入時期の根拠条文→22条4項(実現主義や権利確定主義)
過年度売上金の横領が当期に発覚した際の、消費税の取扱い
過年度売上金の横領が当期に発覚した際に、消費税はどのように処理すればよいでしょうか。
この点、過年度売上に係る現預金を横領された際に、横領された会社が既に売上を適正に計上していたか否かで場合分けします。
① 横領された会社が既に過年度に適正に売上を計上していた場合
この場合に既に消費税を適正に納付しているときには、修正申告の必要はありません。
もっとも、現預金の当該横領を隠蔽するために経費を架空計上していたなど、消費税を適正に納付していなかった場合には、修正申告をする必要があります
② 横領された会社において当該横領の発覚が遅れたため、過年度に売上を過少計上していた場合
この場合には、当該横領により会社が認識できなかった売上に対応する消費税分につき、修正申告により納付する必要があります。
なお、上記②の場合には、その遡って修正した課税期間の課税売上割合を再計算する必要もあるので、ご注意ください。
法人が支払を受ける損害賠償金に係る損害賠償請求権の益金算入時期
上場会社等100社のうち約1社は会計不正(粉飾決算と資産の流用)がなされており、その会計不正の内訳は、粉飾決算が8割、資産の流用が2割です。このように法人が横領(資産の流用)等の不法行為の被害を受けることはままあるところ、法人が例えば横領により損害を受けた場合、私法上は、その損害の発生と同時に損害賠償請求権が発生することになります。また、簿記の仕訳上も不法行為による損失と損害賠償請求権が両建て計上されます。では、法人税法上、当該損害賠償請求権をいつ益金算入することができるのでしょうか。私法上、観念的・抽象的に損害賠償請求権が発生したといっても、当該権利の相手方、金額などが明らかにならなければ権利行使ができず回収もできません。
法人税法では益金の認識基準として一般に実現主義や権利確定基準が採用されている(同法22条4項の公正処理基準が根拠とされています。)ため、実現主義や権利確定基準に基づき、益金の算入時期を判断します。そして、当該損害賠償請求権が「実現」や「確定」したといえるためには、その相手方、金額その他権利の内容及び範囲が確定している必要があり、「実現」や「確定」をしたといえる時期に益金算入されることになります。なお、損害賠償請求権に係る回収可能性の問題は、貸倒損失の計上や貸倒引当金の設定に関わる問題であり、今回の益金算入時期には影響しません。
法人税基本通達2-1-43では損害賠償請求の相手方が法人の役員又は使用人以外の「他の者」である場合の損害賠償請求権の益金算入時期について定めていますが、相手方が法人の役員や使用人の場合には、同通達では明らかではありません。学説としては、同時両建説や異時両建説があり、これら学説の内容を考慮すると、当該損害賠償請求権が「実現」や「確定」したといえるタイミングで益金計上されるものと整理されます。
「誤謬」を巡る会計処理と監査の違い
一般的な意味としては、「誤謬」は「あやまり」を意味し、「不正」は「正義でないこと」を意味しますが、会計上の「誤謬」は、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」4項(8)により以下のとおり明確に定義されています。
「誤謬」とは、原因となる行為が意図的であるか否かにかかわらず、財務諸表作成時に入手可能な情報を使用しなかったことによる、又はこれを誤用したことによる、次のような誤りをいう。
①財務諸表の基礎となるデータの収集又は処理上の誤り
②事実の見落としや誤解から生じる会計上の見積りの誤り
③会計方針の適用の誤り又は表示方法の誤り
例えば、従業員による資産の流用という不正から生じた財務諸表の虚偽表示であっても、会計上は「誤謬」に該当します。
一方、会計監査では、「誤謬」は「不正」と対比して用いられ、財務諸表の虚偽表示は、不正又は誤謬から生じる(監査基準報告書240「財務諸表監査における不正」2項前段)とされています。
そして、不正と誤謬は、財務諸表の虚偽表示の原因となる行為が、意図的であるか否かにより区別されます(同項後段)。従って、上述の会計処理の話とは異なり、従業員による資産の流用という不正から生じた財務諸表の虚偽表示は、監査人の立場からは、誤謬から生じた財務諸表の虚偽表示とは区別して取り扱われます。