でんた丸ブログ
監基報
公認会計士が監査業務に従事しなくなっている理由として、監基報の存在が、監査の魅力を減じているという内容の新聞報道が昨年にありました。今回は、監基報(監査基準報告書)の位置づけについて確認します。
金融庁の企業会計審議会が、①「監査基準」「中間監査基準」「監査における不正リスク対応基準」と②「監査に関する品質管理基準」を定めており、両者は一体として適用されるものとしています。監基報は、このうち①の基準に関して日本公認会計士協会(JICPA)が定めた細則です。②の基準に関してJICPAが定めた細則としては、品基報(品質管理基準報告書)が別途あります。
監査基準は1956年に定められていて、その後、累次の改訂がなされ現在に至っています。一方、監基報は、JICPAが編纂した『監査実務ハンドブック』によれば、2011年に定められたものが改正されて現在に至っている、となっています。この1956年と2011年との間に時の差があるのは、なぜでしょうか。これは、国際監査基準(ISA)を作成している国際監査・保証基準審議会(IAASB)が、ISAの構成に係るクラリティ・プロジェクトを進めた(2004年~2009年)ことに起因します。日本でも、このクラリティ・プロジェクトにならい、監基報の構成について(ⅰ)監査上の「要求事項」とその解釈に当たる「適用指針」を明確に区別すること、(ⅱ)個々の報告書の「目的」を明確にすること、という形で見直すこととなりました(新起草方針の採用)。こうして現在の監基報の元となる規定が2011年に定められた、ということになっているのです。
「暗号資産」「競馬の馬券の払戻金」と所得税の確定申告
暗号資産の一つであるビットコインを、メルカリにおける決済手段として利用できるというニュースが先日ありました。暗号資産は決済手段であると同時に、投機の対象となっているため、株式と同様に日々相場が動いており、直近では高騰しております。今回は、①個人が暗号資産を売買したことにより利益を得た場合、②競馬の馬券が当たった場合に、所得税法上どのように取り扱われるかについて考えてみます。
1.暗号資産
暗号資産取引により生じた利益は、原則として雑所得になります。もっとも、事業所得者が、事業用資産として暗号資産を保有し、棚卸資産等の購入の際の決済手段として、暗号資産を使用した場合、暗号資産取引により生じた利益は事業所得に区分されます。では、確定申告はどうなるのでしょうか。
「給与等」(所得税法28条1項)の金額が2000万円以下の給与所得者の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」(同法121条1項1号)が20万円以下であるときには、確定申告は不要となります。
2.競馬の馬券の払戻金
いわゆる一般の競馬愛好家の「競馬の馬券の払戻金」は所得税法上、10種類の各種所得のうち、どの所得に区分されるのでしょうか。この場合は、一時所得に区分されるため、雑所得の金額の計算のときのように、外れ馬券の購入費用を必要経費として控除することはできません。もっとも、一時所得の場合には雑所得とは異なり、各種所得の金額の計算上、50万円を特別控除額として控除できます(所得税法34条3項)。
前述の暗号資産の場合と同様に、「給与等」(所得税法28条1項)の金額が2000万円以下の給与所得者の場合、「給与所得及び退職所得以外の所得金額」(同法121条1項1号)が20万円以下であるときには、確定申告は不要となります。一時所得は、課税標準の計算の段階で、「×1/2」をするのですが、確定申告の要否の判定にあたっては、「×1/2」をする前の所得金額で判定します。
AIの限界
前回は、AIが仕事の生産性を高めるというプラスの側面について書きました。コンピュータは昔から計算や記憶が得意ではありましたが、最近では、大規模言語モデル(LLM)を用いた生成AIが登場し、人間に近い流暢な会話をすることまで可能となりました。
しかし、AIは手段にすぎず、またAIに限界があるのも事実です。生成AIは、過去の膨大な人間活動や知識を学習しますが、まず、その学習元となる膨大なデータの信頼性を評価する必要があります。更に、ディープラーニング(深層学習)をした生成AIが平然と事実と異なる答えを導き出してしまうhallucination(ハルシネーション、幻覚)と呼ばれる現象も生じるために、生成AIの出力内容の信頼性を人間が評価する必要があります。生成AIの出力内容には偏りや虚偽が平然と紛れ込んでいるという事実があるため、生成AIがどのような情報を学習した上で、どのような出力過程を経て出力をしているのかを正しく理解して利用しなければなりません。
生成AIを上手に利用して、より人間らしい経済の姿を築き、人間らしい生活を享受することが重要なことであり、それが目的、Visionです。そうすると、「人間とは何か」ということが問われ、それについて各人が考えていく必要があります。例えば、倫理(生き方の中で中心にあるもの、モラル)観といったものは生成AIには備わっておらず、人間に備わっているものです。また、人間一人一人が、機械とならずに自分の頭で考え、意思をもって行動したり、コミュニケーションする、というのもAIにはできない人間の特徴です。まさに生成AIの登場は、18世紀後半にイギリスで起こった産業革命だけでなく、人間の精神を解放した「ルネサンス」(14~16世紀のヨーロッパで、中世のしきたりに囚われず、人間らしさを求めた新しい文化の動き)にもなぞらえることができるでしょう。
AIは敵か味方か
第1次産業革命が英国で起こり水力や蒸気機関を動力源とする紡績機が出現すると、職を奪われた労働者が、労働環境の改善を求め機械や工場建築物を打ち壊すという運動が起きました(ラッダイト運動、1811年~1817年)。現代のAIにおいても、AIの発展により職を奪われる人がいます。CMではAIキャラクターが使われ始めました。出演者とのスケジュール調整も要らずに低コストで魅力的なAIキャラクターを作ることができるようになり、しかもAIキャラクターには不祥事が生じません。AIにより職を奪われる人から見れば、AIは敵といえそうです。
しかし、AIは明らかに生産性を高めます。AIの発展により職を奪われる人も、新たな能力を獲得しAIを上手に利用して高付加価値な人材となる必要があります。国もこのような人達を支援するために、リカレント教育に対し教育訓練給付制度を設けています。著作権といった法的な制度整備も進められています。AIを敵とみなすのではなく、AIと共存できる能力を磨き、AIを味方につけ生産性を向上させるという発想の転換が求められています。
では、AIと共存できる能力を磨いた高付加価値な人材像とは、どのようなものなのでしょうか。次回は、この点について考えてみたいと思います。
監査法人
監査法人は法人税法上、普通法人に区分されますが、公認会計士法34条の2の2により設立が認められているという点で特殊です。以前紹介した公認会計士法1条(公認会計士の使命)と同法1条の2(公認会計士の職責)は、監査法人に準用されます。経営の神様が発する松下幸之助の言葉よりも、これらの法律の条文に何が書かれているのかの方が優先されるのです。この点、日本公認会計士政治連盟は、国会議員と密に意見交換することにより、公認会計士法をはじめとした公認会計士に関わる法制度の改善を図っています。
製品に品質の高低があるのと同様に、監査の品質にも高低があります。しかし、今までは監査報告書が短文式で定型的な表現で書かれていたため、監査法人ごとの違いが外部からは分かりにくい状況にありました。そこで、2021年3月期からは、一部を除く金融商品取引法監査が適用される会社に対してはKAM(監査上の主要な検討事項)を監査報告書に記載することが義務付けられました。また、監査法人のガバナンス・コードにより原則として監査法人の透明性を高めることが求められています。










