でんた丸ブログ

相続時精算課税制度

令和5年度の税制改正により、相続時精算課税において2024年1月から年110万円の基礎控除(非課税枠)が創設されました。一方で、暦年課税においては、今後段階的に相続財産に加算される生前贈与の対象が広がっていきます。そこで、今回はまず、相続時精算課税制度及びその改正のポイントをご紹介いたします。

1.相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、平成15年度税制改正により創設されたものです。その創設の趣旨は、生前贈与と相続との間で資産移転の時期の選択に対して中立的な仕組みを確保する点にありました。

しかし、暦年課税の下では年110万円以下の贈与であれば贈与税の申告が不要となる一方で、相続時精算課税制度を選択した後の贈与については、確かに累計2500万円までの特別控除はありますが、贈与税の申告自体は金額にかかわらず必要とされていました。このように相続時精算課税制度の使い勝手が良くなかったため、今までは贈与税においては、暦年課税が主流となっていました。

2.令和5年度の改正のポイント

今般の改正により、2024年1月1日以後に受けた贈与については、相続時精算課税制度の下でも暦年課税と同様に、年110万円以下の贈与であれば申告が不要となりました(相続税法28条1項)。しかも暦年課税とは異なり、年110万円以下の贈与であれば、相続財産に一切加算されません(相続税法21条の15第1項、21条の16第3項)。もっとも累計2500万円の特別控除分の生前贈与については、従来通り、相続発生時に相続財産に加算されます。

(注1)

相続時精算課税に係る贈与税の相続税法上の基礎控除額は、暦年課税に係る贈与税の基礎控除(相続税法21条の5)の場合と同様に60万円です。しかしながら、租税特別措置法によりいずれの場合も110万円に引き上げられています(租税特別措置法70条の2の4第1項、70条の3の2第1項)。そこで、ここでは、いずれの場合も基礎控除額を110万円とします。

(注2)

相続時精算課税の適用により相続税の課税価格へ加算された価額については、相続等による取得のみで適用される「小規模宅地等の特例」の適用はなされません。

学校法人における確定申告

申告期限の延長の届出をしていなければ、3月末を事業年度終了の日としている内国法人の場合、5月末までに確定申告書を税務署長に提出する必要があります(法人税法74条、なお消費税については、消費税法45条1項参照)。そこで、今回は学校法人においての確定申告について、ご紹介いたします。

1.法人税

学校法人は、法人税法別表第2に掲げられており、公益法人等(法人税法2条6号)に区分されます。公益法人等は、法人税法上、収益事業から生じた所得に対してのみ課税されます(同法4条1項)。

2.消費税

一方で、消費税法上は、以下の4要件を満たす国内取引であれば、消費税の課税の対象となります(消費税法4条1項・2条1項8号)。

①国内において行うものであること、②事業者が事業として行うものであること、③対価を得て行うものであること、④資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供であること

もっとも、学校法人を含む公益法人等では、特定収入とされる補助金等の収入割合が高いことが多く、消費税の計算上、この特定収入を考慮する必要が出てきます。つまり、特定収入は資産の譲渡等以外の収入となるために課税売上からは除かれる一方で、特定収入を財源とした支出は消費税の課税対象となることが多い下では、一般企業のように控除対象仕入税額を算出すると、特定収入に見合う部分の還付消費税額が多額になってしまうのです。そこで、特定収入が賄っている課税仕入れ等の税額に相当する金額を控除した残額に相当する金額を、控除対象仕入税額とすることになります(消費税法60条4項、消費税法施行令75条)。

 

 

円安に伴う為替差損の税務上の取扱い

現在、円安が進行中です。円と米ドルとの間の為替相場におけるTTMでは、

2021年3月末 1ドル110.71円 → 2022年3月末 1ドル122.39円 → 2023年3月末 1ドル133.53円

→ 2024年3月末 1ドル151.41円

となっています。

このように外国為替相場が著しく変動した場合には、法人税法61条の9第4項・法人税法施行令122条の3第1項に次のような内容の規定があります。すなわち、事業年度終了の時に有する外貨建資産等(外貨建株式等を除く。)に係る外国為替の売買相場が著しく変動した場合には、(長期外貨建金銭債権債務であっても、)その外貨建資産等と通貨の種類を同じくする外貨建資産等のうち、外国為替の売買相場が著しく変動したもののすべてにつき、その事業年度終了の時にその取得又は発生の基因となった外貨建取引を行ったものとみなして、期末の外国為替相場による換算のし直しを認めています。従って、この規定を適用して期末の換算替えを行い、為替差損を計上した場合には、別表4の税務調整は不要となります。

(注1)

上記の著しい為替相場の変動とは、以下の計算式で計算をして、おおむね15%(下限割合は、13.5%とされています。)に相当する割合以上となる場合とされています(法人税基本通達13の2-2-10)。

((A)-期末における外貨建資産等の帳簿価額(本規定適用前))÷期末の外国為替相場により換算した外貨建資産等(A)

(注2)

外国通貨の種類を同じくする外貨建資産等のうちに、上記の算式により計算した割合がおおむね15%に相当する割合以上となるものが2以上ある場合には、その一部についてのみ同項の規定による円換算を行うということはできません。従って、例えば、外貨建債権は換算のし直しを行わずに、外貨建債務のみ換算のし直しを行うということは認められません。

君たちはどう生きるか (4)

本の第5章は、第4章から一転して裕福な家庭環境にいる同級生(水谷君)の大きな自宅が舞台です。

この第5章の叔父さんのノートの題名は、「偉大な人間とはどんな人か―ナポレオンの一生について―」です。ここでは、ナポレオンの一生を人類の大きな歴史の流れの中に位置づけた上で、人類の進歩に役立った事業だけが値打ちがあり、そういう事業をナポレオンは勇気・決断力・強い意志をもって成し遂げたとされています。また、人類の進歩と結びつかない英雄的精神も空しいが、英雄的な気魄を欠いた善良さも、同じように空しいことが多い。そして単に空しいだけでなく、世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない、とも書かれています。

人類の大きな歴史の流れの中で,人類の進歩に役立っているか否かを考えるという話は、歴史をなぜ学ぶ必要があるのかという質問に対する一つの解答のように感じました。

君たちはどう生きるか (3)

本の第4章の叔父さんのノートの題名は、「人間であるからには―貧乏ということについて―」です。第4章の叙述からは、東京都文京区小石川付近の昭和初期の風景を窺い知ることができます。コペル君が通う中学校(当時は小学校までが義務教育で、また中学生は5年生までいました。)の生徒の親の職業としては、有名な実業家、役人、大学教授、医者、弁護士などが多い中で、豆腐や油揚げを家内工業として生産し販売するという自営業の親を持つ同級生(浦川君)の経済状況が描かれ、経済格差が問題として取り上げられています。全ての人が人間らしく生きていくことがまだできていないという問題と言い換えられています。

この同級生は、家の手伝いをすることで既に生産者の側面があります。一方で、コペル君は、何ら生産せず消費ばかりする人にすぎないが、自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大きなものを日々生み出していると記されています。そして、その答えをコペル君自身で見つけるようにとされています。

話は変わりますが、公認会計士は、国家の公認会計士制度を支え、信頼という目に見えないものを生産しています。


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