でんた丸ブログ
外国子会社から受ける配当等の益金不算入
外国子会社から受ける配当等については、法人税法(以下省略)23条1項ではなく、23条の2が適用され、(注2)に記載した金額だけ益金不算入となります。23条の2は、平成21年度改正によって創設されたのですが、これにより外国子会社から受ける配当等について日本で課税されることはなくなり、外国子会社で獲得した税引き後の利益を日本に還流させる際の税制面での障壁がなくなりました。もっとも、外国法人税と、還流された配当等に対する外国源泉税は当該改正前から変わらずに課されます。また、当該改正により複雑な間接外国税額控除制度は廃止され、更に日本と外国との二重課税が解消されたこともあり、外国源泉税に係る外国税額控除制度も廃止されました(69条1項・法人税法施行令142条の2第7項3号)。なお、費用たる外国源泉税と、収益たる外国子会社から受ける配当等を対応させる観点から、後者が益金不算入となると、前者は損金不算入(39条の2)となるという関係にあります(※)。
(※)平成27年度改正により、外国子会社の本店又は主たる事務所の所在する国又は地域の法令において、当該外国子会社が支払う配当につき損金算入される場合には、当該外国子会社から受ける配当等の益金不算入のルールは適用されません(23条の2第2項1号)。また、費用たる外国源泉税と収益たる外国子会社から受ける配当等を対応させる必要があるところ、当該場合には、後者の益金不算入が制限されるため、前者は損金不算入となりません(39条の2第四括弧書)。なお、外国源泉税につき、外国税額控除(69条1項)の適用を受ける方を選択すれば、損金不算入(41条)とすることもできます。
(注1)23条の2により外国子会社から受ける配当等を益金不算入とするためには、簡単化すると以下の2要件を満たす必要があります(同条1項、法人税法施行令22条の4第1項)。
①親会社が外国子会社の発行済株式の総数または議決権の25%以上を保有していること
②上記①の状態が、外国子会社から受ける配当等の支払義務が確定する日以前6月以上継続していること
(注2)23条の2により益金不算入となる金額は、剰余金の配当等の額から当該剰余金の配当等の額の百分の五に相当する金額(法人税法施行令22条の4第2項)を控除した金額となります。
留保金課税
これまで、受取配当等の課税の場面で、法人段階と株主段階で各1回の課税がなされるという二段階課税について述べてきましたが、第二段階目の個人株主段階での受取配当等の課税を回避する目的で第一段階の法人が利益を配当せずに留保するということが考えられます。例えば、個人事業主が所得税における超過累進税率(最高税率45%、所得税法89条)を回避するために法人成りし、利益を配当せずに一定税率である法人税率23.2%(法人税法66条1項)の法人段階の課税だけで済ませようとする場合です。そこで、このような租税回避に対するペナルティとして現行法では、3段階の超過累進税率の構造を有する留保金課税のルールが設けられています(法人税法67条1項)。留保金課税は通常の法人税に加え特別に課されるものです(特別税率)。
留保金課税の対象となる会社は、多様な株主がおり株主が配当を要求するような上場会社では勿論なく、1つの株主グループにより支配され、当該1つの株主グループの意思で上記のような租税回避を試みようとする傾向にある「特定同族会社」(※)です。もっとも、平成19年度改正により、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社は留保金課税の対象から除かれました。なお、その後の平成22年度改正により、資本金の額または出資金の額が1億円以下の会社であっても、資本金の額または出資金の額が5億円以上の大法人等と完全支配関係にある会社であれば、留保金課税の対象となる会社となりました。
(※)特定同族会社の定義は、法人税法67条1項にあり、その定義で使用されている「被支配会社」の定義は同条2項にあります。
混合配当
混合配当とは、資本剰余金及び利益剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当のことです。(注)にあるように個人株主も法人株主と同様の議論ができるため、ここでは法人株主を念頭に置いて議論を進めていきます。原資が利益剰余金のみであり資本剰余金の額の減少に伴うものではない剰余金の配当については法人税法(以下省略)23条1項1号が適用される一方で、混合配当は資本剰余金の額の減少に伴う剰余金の配当となるため、24条1項4号(資本の払戻し)が、混合配当の全体に適用されることとなります(最判令和3年3月11日民集75巻3号418頁[国際興業管理株式会社事件])。混合配当を受けた法人株主においては、結論として、次のような取扱いをすることになります(国税庁HP令和3年10月25日付「最高裁判所令和3年3月11日を踏まえた利益剰余金と資本剰余金の双方を原資として行われた剰余金の配当の取扱いについて」及び上記判例を参照)。
①利益剰余金を原資とする部分については、その全額を利益部分(法人がその事業活動により獲得した金額で株主等に分配することなく留保している部分)の分配として扱い、資本部分(法人の財産のうち株主等から出資を受けた部分)の払戻しとして扱うことは予定していない。
②資本剰余金を原資とする部分については、資本部分の払戻し(※)と利益部分の分配とに分ける。資本部分の払戻しの上限金額は、資本剰余金を原資とする部分の金額(減少資本剰余金額)とする(法人税法施行令23条1項4号イ、ロの柱書第二括弧内の最終括弧)。
(※)資本部分の払戻しの金額は、法人税法施行令23条1項4号イでは、「当該払戻し等を行つた法人(イにおいて「払戻等法人」という。)の当該払戻し等の直前の払戻等対応資本金額等を当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の総数で除し、これに同項に規定する内国法人が当該直前に有していた当該払戻等法人の当該払戻し等に係る株式の数を乗じて計算した金額」として計算されます。また、上記の払戻等対応資本金額等は以下の計算式により計算されます。
払戻等対応資本金額=払戻直前の資本金等の額×(減少した資本剰余金÷当該払戻し等の日の属する事業年度の前事業年度終了の時の簿価純資産価額):この下線部分は法人税法施行令119条の9では「払戻等割合」と定義されています。
上記①と②において、利益部分の分配とされた金額が、23条1項1号の配当とみなされます(みなし配当)。また、資本部分の払戻しの金額は、有価証券の譲渡対価(61条の2第18項)と認識する金額になります。なお、剰余金の配当を行った法人の側は、この利益部分の分配とされた金額だけ利益積立金額を減算することになります。
(注)法人株主ではなく、個人株主の場合には、次のように読み替えてください。
・法人税法23条1項1号 → 所得税法24条1項
・法人税法24条1項4号 → 所得税法25条1項4号
・法人税法施行令23条1項4号 → 所得税法施行令61条2項4号
みなし配当課税
配当について租税法は会社法の概念を借用しながらも、法人税法24条、所得税法25条において「みなし配当」という概念を創設しています。この結果、(Ⅰ) 法人段階で所得に対して法人税の課税がなされた後で更に、(Ⅱ) みなし配当事由(※)により金銭その他の資産の交付を受けた側で、当該資産の交付額のうち原資の回収にあたらない部分に対し「みなし配当課税」がなされることになります。法人株主については、原則として受取配当等は益金不算入となるため(2025年5月19日付け本ブログ参照)、ここでは個人株主を想定して話をすすめていきます。
法人に対し出資された財産を原資にして当該法人が稼いだ所得に対する課税として、当該法人段階の法人税の課税だけでなく、「みなし配当」という概念が創設されていることで、当該法人の株主段階の課税も加わり、二段階課税が貫徹されることになります。仮に「みなし配当」という概念がなかったとすると、法人段階の法人税の課税だけになり、二段階課税が貫徹されないことになります。現行法では、二段階課税を貫徹した上で、当該法人の個人株主段階において配当控除(所得税法92条)が手当てされており、法人段階の法人税の課税と、当該法人の個人株主段階の課税が不完全ながらも統合されています。
(※)主な、みなし配当事由は、以下のとおりです。
①適格合併を除く合併(法人税法24条1項1号、所得税法25条1項1号)
②適格分割型分配を除く分割型分配(法人税法24条1項2号、所得税法25条1項2号)
③適格株式分配を除く株式分配(法人税法24条1項3号、所得税法25条1項3号)
④剰余金の配当(資本剰余金の額の減少に伴うものに限る。)のうち分割型分割によるもの及び株式分配以外のもの(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)
⑤解散による残余財産の分配(法人税法24条1項4号、所得税法25条1項4号)
⑥自己株式の取得(法人税法24条1項5号、所得税法25条1項5号)
(参考)
現物配当が適格現物分配に該当する場合には、所得税法24条1項かっこ書により、配当所得の対象となる配当等の範囲から除かれているため、適格現物分配に該当する現物配当を行う法人は、源泉徴収義務(同法181条)を負いません。
査察部(マルサ)
2025年4月21日付けの本ブログでは、国税局の資料調査課をご紹介しました。今回は国税局の査察部をご紹介します。査察部では悪質な脱税者に対して、強制調査(ガサ)を含む査察調査を行っています。脱税なので刑事事件となる点が、「任意調査のエキスパート集団」である資料調査課の扱う事案とは異なります。査察調査の流れは①情報事務と②調査事務に区分けされます。
① 情報事務
様々な媒体から、課税・徴収漏れに関する情報収集をします。
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収集した情報の内容と申告事績等を照合し、脱税が疑われる対象者(犯則嫌疑者)を抽出します。
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脱税の規模や手口などをより具体的に確認するための内偵調査を行います。
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内偵調査の結果、多額の脱税が見込まれ、手口も悪質と認められるなど、社会的非難に値する犯則嫌疑者について、脱税事件としての着手がなされる。
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強制調査を実施するために、裁判所へ許可状を請求する。
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② 調査事務(国税通則法第11章参照)
強制調査を実施し、証拠物件等を差し押さえる。
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質問調査の際の供述内容や証拠物件を分析・検討し、精査を重ねる。
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検察官へ告発する場合には、検察官への告発資料を作成し、検察官へ告発する。
全国で約1,500名の国税査察官が上記の職務に当たり、東京国税局査察部には約550名が在籍しています。