でんた丸ブログ

新リース会計基準の公開草案について

21世紀に入り、国際的な比較可能性を高めるために、会計基準のコンバージェンス(統合)が進められてきました。2007年3月に、企業会計基準委員会(ASBJ)から「リース会計基準」が公表され、当時の国際的な会計基準と整合的になったものの、2016年1月にIFRS第16号「リース」が公表されたため、2023年5月にASBJは、IFRSとのコンバージェンスの観点から「新リース会計基準」の公開草案を公表しました。そこで、以下で当該公開草案の概要を紹介いたします。

1.リースの定義・識別

リースの定義と識別の規定が置かれています。この規定に従いリース会計の適用範囲が定まるところ、その適用範囲が現状より広がる可能性があります。

リースの定義:原資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する契約又は契約の一部分

【リースの識別】

①資産が特定されているかの判断、②資産が特定されたと判断された場合に、その特定された資産の使用を支配する権利が借手に移転しているか(使用権の支配が借手に移転しているか)の判断が求められます。

契約にリース要素が含まれると判断された場合、借手はリース構成部分と非リース構成部分の間で、契約における対価の金額をそれぞれの部分の独立価格の比率に基づき按分します。

※会計処理上の契約の単位(収益認識基準27項における契約の結合の取扱いが適用される)は、法形式上の契約単位と同一になるとは限りません。1つの契約の中に複数のリース要素が含まれている場合もあれば、1つの契約の中にリース構成部分と非リース構成部分が含まれている場合もあります。

独立価格が観察可能でないと判断される場合は、観察可能な情報を最大限に利用して独立価格を合理的に見積もる必要がありますが、一定の実務負担が生じます。

そこで、リース構成部分と非リース構成部分に分けずに、リース構成部分と非リース構成部分とを合わせてリース構成部分として会計処理を行うことを認める例外的な取扱いが置かれる見込みです。

但し、非リース構成部分に重要性がある場合に、この例外的な取扱いを適用すると、原則どおりにリース構成部分と非リース構成部分を区分する取扱いに比して負債の計上額が多くなる点を考慮する必要があります。

※リース構成部分と非リース構成部分とを合わせて、非リース構成部分として会計処理を行うことは認められません。

 

2.借手の会計処理モデル

(1)短期リースおよび少額リースを除いて、全てのリースについて単一の使用権モデル(使用権資産およびリース負債 を計上する)を適用します。

①まず、リース負債を測定します。

借手は、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値によりリース負債を測定し、リース開始日に計上します。

②次に、使用権資産を測定します。

・①で測定したリース負債に、リース開始日までに支払った借手のリース料および付随費用を加算した額を加算する

・資産除去債務を負債として計上する場合に、関連する有形固定資産が使用権資産であるときは、当該資産除去債務        の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加算する

※現行のリース会計基準適用指針における貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額と比較を行う方法を踏襲せず、IFRS第16号「リース」と整合的に、借手のリース料の現在価値を基礎として使用権資産の計上額を算定します。

※使用権資産は、概念フレームワークにおける「資産」の定義を満たします。

※短期リース:リース開始日において、借手のリース期間が12ヵ月以内であるリース

※少額リース:以下の①または②(②については(ⅰ)または(ⅱ)のいずれかを選択した上で継続適用)

①重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース

但し、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができます。また、この基準額は、通常取引される単位ごとに適用し、リース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合には、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができます。

②次の(ⅰ)または(ⅱ)を満たすリース

(ⅰ)企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりの借手のリース料が300万円以下のリース

この場合、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産または無形固定資産が含まれている場合、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができます。

(ⅱ)原資産の価値が新品時におよそ5千米ドル以下のリース

この場合、リース1件ごとに、この方法を適用するか否かを選択できます。

(2)リース期間の見積り

リース期間

=解約不能期間

+借手の延長オプションの対象期間(借手が当該オプションを行使することが合理的に確実である場合)

+借手の解約オプションの対象期間(借手が当該オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)

※貸手のオプションは考慮しません。

※現行:解約不能のリース期間をもってリース期間とします。

再リースを行う意思が明らかな場合を除き、再リース期間は解約不能のリース期間に含めません。

 

3.貸手の会計処理モデル

貸手においては、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区別は残されます。

また、ファイナンス・リースに該当するか否かの判定に用いられる「現在価値基準」や、「経済的耐用年数基準」もそのまま残されます。

一方で、「収益認識基準」において割賦基準が認められなくなったこととの整合性から、現行のリース会計基準適用指針に定められている「リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法」は廃止されます。

また、リースの定義と識別については、借手と共通の新ルールに従う必要があります。

※貸手の会計処理については、2016年公表のIFRS第16号「リース」において抜本的な改正が行われていません。

 

4.適用時期

新リース会計基準(公開草案の最終基準)公表から2年程度経過した日である4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用されます。

但し、当該基準公表後、最初に到来する4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から早期適用することができます。

※経過措置について注意を要します。


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